雇用も拡大、2019年版観光白書
政府はこのほど2019年度版観光白書を閣議決定した。観光白書は4部で構成する。今回は自然災害が観光に及ぼす影響もまとめた。テーマ章では近年の観光が日本経済に与える影響を中心に分析している。18年の訪客数は3119万人で5年前と比べ約3倍、訪日外国人旅行消費額は過去最高の4・5兆円と共に増加傾向にある。好調な訪客により、建設投資や雇用も拡大。日本経済において、観光の存在感が高まっている。
(中略)
女性と高齢者の就業者数の伸びが顕著だった。12年から18年の6年間で、女性は4万人増(男性は1万人増)の35万人。高齢者は6万人増(15―64歳は2万人増)の13万人だった。
(旅行新聞 7月11日)
観光業は元々女性や高齢者の就業者が多い業種だが、伸び率も女性や高齢者の方が比較的高い。そのため、ますます女性と高齢者への依存が高まる傾向にある。特に、地方の観光地では、若年層の新規採用は難しく、人手は高齢者に頼らざるを得ない。
一昔前まで、地方の温泉地では、若い男性の職場が相対的に少ないことが問題だった。日本有数の温泉地である別府温泉では、女性の仕事は宿泊施設やお土産物店などに多くあるのに対して、男性の仕事はタクシーの運転手ぐらいだと、当の運転手がぼやいていたほどだ。しかし、今や別府程度の規模の都市でも若年層は少なくなり、採用するのが難しくなった。さらに人口の少ない街では、人手不足はさらに深刻だ。
高齢者にとっても、ホテルや旅館などの宿泊業や観光ガイドなどのサービス業は、比較的働きやすい職場だ。今後とも、高齢者の雇用は増え続けるだろう。しかし、観光業において高齢者の活躍の場がさらに拡大するには、企業側にも努力が必要になる。特に、増え続けるインバウンド需要への対応に高齢者の知恵と経験と人間力を如何に活かすかが課題のひとつだ。企業の知恵が試されている。