自分という商品のブランドを作ろう-第一回-

キャリアコンサルタント山口由美子

1982年、慶応義塾大学経済学部卒業後、バンク・オブ・アメリカ東京支店に入行。UBS証券会社(当時UBSフィリップス・アンド・ドリュー証券会社)調査部を経て、1990年カリフォルニア大学ロスアンジェルス校大学院にて経営学修士を取得。同年、マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社に入社し、ヘルスケア、金融等のプロジェクトに従事、また外資系企業グループにおいて、中堅外資系企業の日本市場における製品市場戦略を支援。
1996年にマッキンゼー・ドイツのデュッセルドルフ支社へ転籍後は、マッキンゼー欧州ヘルスケアグループの一員としてナレッジマネジメントを中心とした活動を行う。2002年に帰国後、元マッキンゼーの同僚の立上げた医療関連のブティック・コンサルティング・ベンチャーであるメディカルクリエイトに創業メンバーの一人として参画。2006年には米国シリコンバレーにおいて同社の米国オフィスを立上げ、2010年に帰国後は、同社の経営管理部門の責任者として社内システムの構築を行う。
2012年8月、ジーニアスに参画。配偶者の度重なる海外転勤や二人の子育てとキャリアの両立に奮闘した経験により、特に潜在女性労働力の市場化への貢献をライフワークとする。

ヘルスケア業界の転職動向

-浅井 現在担当されている業界は?
-山口 ヘルスケアの業界が中心です。
医療はアベノミクスの成長戦略の柱でもある高成長分野です。
富士フィルム、ソニーなどをはじめ、かつては異業種と思われていた企業が、どんどん医療分野に参入していますね。参入分野も薬、医療機器から広く介護福祉をサポートする製品やサービスまで、自社の埋もれた技術シーズを活かすだけでなく、大胆なM&Aなど大型投資も含め、医療分野進出はかなり活況を呈しています。

-浅井 どんな人材を求めているのですか?
-山口 人材でいうと、やはり医療独自のゲームのルールを知っていることが大事です。
医療業界が他と大きく異なるのは、モノやサービスの対価を払うのがユーザー(=患者)ばかりでなく、医療保険(=国、保険組合など)であること。したがって価格も市場競争によらず、国が決めた公定価格であり、競争原理が働きにくいこと。また製品を出す上でも出した後でも、効果や安全性に関する厳格なチェック機構が存在し、非常に複雑な手続きが求められるなど、業界特有のルールがプレーする上での参加資格となります。
また、その前にそもそも医療という、人の命に直接かかわる仕事をしていることに対する思いや高い志をもつことが大前提ですね。

職務経歴書では自分の強みが会社の貢献につながることを説得力をもって語ること

-浅井 山口さんが担当された中で、採用が決まるのはどのような人でしょうか?

-山口 同じ経験を積んだ方であれば、やはり職務経歴書の完成度は重要ですね。その人の過去の実績やキャリアは職務経歴書に集約されているわけですから、それが第一関門です。
職務経歴書に経験やスキルが正確にわかりやすく書けている事はもちろんですが、誤字脱字、年号の間違いなどの基本的ミス、または他社に提出した志望動機のままになっていないかなどには気を付けてほしいです。相手にしてみたら書類審査は職務経歴書だけで判断するのだからそういう些細なところでこの人大丈夫かな?と思われてしまいます。とにかくレイアウトを含め、完成度を上げることですね。
内容的には、自分の強みがきちんと表現されている事。
そのための自分の強みを分析した上で、それがその会社に対するどういう貢献につながるのかが説得力をもって語られていること。

面接で見ているのは、本人と採用ポストとのギャップを埋めてくれそうだなと思えるストレッチする力

-浅井 面接では?

-山口 面接では、積極性と自信が重要ですね。
すごく学歴も立派で、職務経歴書もきれいなのに、消極的でやる気がみせられない人がたまにいらっしゃいます。
書類選考でパスしているということは、既に「スキル」面での資格はあるということですので、そこに自信を持って面接に挑んでほしいです。面接で見るのはその方の「ウィル(意思力)」です。そのポジションに求められているスキルと、多少ギャップがあっても、強い意欲があれば早くそのギャップを埋めて、即戦力に育ってくれるだろうとポテンシャルに期待できるわけです。
多くの企業において、中途採用で求められるのは即戦力です。
前職で同じような業界、職種、ポジションの人を持ってくるのが採用側としては一番リスクが少ないわけです。
ただ、全部が全部そういう条件の揃っている人を採用出来る訳ではないですね。同じ職種でも会社によって仕事内容が微妙に違っていたり、求める人材像と本人にギャップがあったりします。
その時に面接で見ているのは、そのギャップをこの人は埋めてくれそうだなと思える、ストレッチする力が見えるかどうかなんです。
それには成長意欲を見せることは勿論、何とかやってくれそうだなと思わせる前向きな態度、将来を見据えた高い目線、そして自信ですね。

自己分析の重要さ

-浅井 職務経歴書、面接どちらもやはり自己分析が重要ということですね?

-山口 そうですね。自信をもつためには、徹底的に自己分析をすることですね。過去の自分だけでなく、現在そして将来の自分についても分析してみることですね。
過去、現在のキャリア、能力が将来にきちんとロジカルに線でつなぐことが出来ていると、言うことに説得力が出てくるし、先ほど言った採用側の理想の人材と今現在乖離があっても未来の可能性をより現実的に感じてもらえるということもあると思います。そうなればキャリアアップの転職が出来きますよ。

キャリアアップの転職のためにすべきこと

-浅井 そのように自己分析をするためには、普段から心がけるべきことはありますか?

-山口 いくつかあります。まずは、自分が出来る事ばかりでなく、自分にとって絶対必要なこと、自分が本心からやりたい事の3つの観点から仕事を絞り込んでいくことで、より全体感ある分析ができると思います。
あと、仕事を一生懸命しているときは目の前のことしか見えないですが、その仕事の中にもっとキャリアを広げる要素が色々隠れています。客観的に見るとそこから新たな自分の「ウリ」を作るヒントが今の仕事の中にあるのです。そこに普段からアンテナを立てて1つ1つ意識して育てていくことで、目の前の仕事に追われるだけから、自身でキャリアをコントロールする舵取り側に身を置くことができます。それにこれまで何でもないと思った小さな仕事でも、自分の航海図の中の重要なポイントであると気付くことで、仕事がもっと面白くなると思います。