監査人・内部統制のプロとして歩むキャリアとは【後編】

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松本 茂外志(まつもと しげとし)さん

富山大学薬学部卒業後、中外製薬㈱入社。
CIA(公認内部監査人)、CFE(公認不正検査士)。
入社から一貫して、医薬品マーケティングに従事したのち、同社において1994年~2002年までの8年間、医療用具事業に立上げから携わる。
その後のグループ再編時に、監査部に移り、キャリアを監査人へと転換する。
2002年から5年間、監査部長を務め、2007年から常勤監査役に就任。
現在は同社顧問を務める。

「歩き回る監査役」という言葉の背景は

三上: 歩き回る監査役という言葉が出てきた背景を教えてください。
松本
さん:
監査役協会の全国大会で、監査役監査業務における面談の重要性を訴えました。面談を通じてこそ、現場の生情報を知ることができるわけであり、これを「歩き回る監査役」と名付けました。
現場では実際に何が執行されているのか、経営が出した方針が現場では執行されているのか。この2つの視点で現場を見る必要があります。
経営方針の通りに執行されているのかを、監査役が実際に見ることが大事です。もし、経営方針通り執行されていない、内部統制が取れていない状況であれば経営リスクとなります。

IPOを目指す・向かえる企業での監査とは

 

三上: IPOを目指す企業の監査役について教えてください。
三上さんインタビュー中
松本
さん:
監査役はこれから上場しようとしている会社に一番必要です。
監査役単体ではなく、三様監査の連携が重要になります。小さい会社の場合、特に内部監査が未成熟であることが多く、監査役、監査法人が補完し合わなければなりません。
そして三者が連携し合うためには、旗振り役が必要になります。その旗振り役となるのが、監査役となります。
ガバナンス体制というのは、最初から完璧であることはないため、身の丈に合った監査、徐々に成熟させればいいのです。

内部統制を仕事にし始めた方へ

三上: 内部統制のスペシャリストを目指す若い方へアドバイスをお願いします。
松本
さん:
内部統制とは海外から入ってきたものです。そのために海外の文献が多く、翻訳文献は読んでも日本語としてよくわからなかったり、日本の商習慣に合致しない記述も多いです。
そのため、体系立てて内部統制を学ぶには、CIAなどの監査に関連する資格の勉強を行うことをおすすめします。
資格の勉強をすることにより、内部統制について体系的に学べるだけでなく、資格取得にもつながるため、一石二鳥です。
松本さんインタビュー中
三上: スタッフ部門の人たちが目指すキャリアパスは、財経ならCFO、人事総務であれば人事部長が規定路線でしたが、内部監査部長・内部統制部長もキャリアゴールに捉えられるのでしょうか?
松本
さん:
内部監査だけが内部統制を見るのではなく、各部門に内部統制者を送り込むことで、部門ごとにリスク管理の視点を持つことができるため、どの部門においても内部統制の視点は必要です。
そのため、内部統制や監査部門から執行側へ、またはその逆のローテーションはどんどん行うべきだと思います。
三上: 内部監査部門の最終ゴールは何ですか?
松本
さん:
内部監査部門の最終ゴールは監査役です。
私が2007年に監査役になったとき、日本の上場企業では監査部長が監査役になるのは、4%ほどであって、ごく稀なケースでした。
ですので、監査役で内部統制を理解している人が少なかったのです。
しかし、今後は内部統制の専門性を持った人が、監査役となるケースが増えると思います。

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松本茂外志さんが手掛けた事例

IPOに向けた内部統制、コンプライアンス機能の構築