-第2回-高年齢者雇用安定助成金(高年齢者活用促進コース)

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高年齢者の労働力化推進を法制度として後押しするものが高年齢者雇用安定法であり、そして同法が、高年齢者が健康で、意欲と能力がある限り年齢にかかわりなく働き続けることができる社会(以下「生涯現役社会」という。)の実現を目指している、という点について、前回は具体的な就業規則例も併せてご案内させていただきました。

第2回の今回は、高年齢者雇用を国として財政的に支援する取り組みの一つである高年齢者雇用安定助成金(高年齢者活用促進コース)について、その概略を見てまいりたいと思います。

【1】高年齢者、働く人の1割に!

助成金のお話の前に、ちょうど本コラムの原稿を準備していたところ、高年齢者雇用に関するホットな情報が飛び込んで参りましたので、少々、触れておきたいと思います。
高年齢者雇用安定法の効果がいかほどかはいったん置いておきまして、我が国の65歳以上の就業者数は2013年におよそ636万人と前年比7%増加し、就業者全体に占める割合が初めて1割を超えました(2014年2月18日付日経朝刊)。
これはOECDの資料(2012年)によれば、先進諸外国の中でも際立って高いものとなっています。
今後の日本の生産年齢人口(15歳~64歳)の減少を慮れば、明るいニュースだと言いうると思います(なお、個人的な見解としては、真の生産年齢人口の増加のためには、若年者と特に女性就業者のM字型カーブの改善がより重要であるとの立場にあります)。
ちなみに、65歳以上の労働者の就業者に占める割合は、日本(9.5%)、アメリカ(5.1%)、イギリス(3.2%)、フランス(0.9%)などとなっています(前掲OECDデータより)。
日本の高年齢者活用は、生産年齢人口の際立った減少問題はあるものの、先進諸外国の中でも一歩、先んじていると言えるのではないでしょうか。

【2】高年齢者雇用安定助成金(高年齢者活用促進コース)

‘①支給対象となる事業主の要件
(1)支給申請日の前日において、当該事業主に1年以上雇用される 60 歳以上の雇用保険被保険者(短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者を除く。以下同じ)が1人以上いること
 ※支給申請の前段階として高年齢者の雇用環境整備に関する計画の策定をし、この計画についての認定を受けている必要があります。また、この計画期間は最大2年まで設定することができるようになっています。計画期間が長期になるということは、それだけ助成金の支給申請までのタイミングが先になってしまうということにもつながりますが、メリットは、助成対象となる経費等の対象の範囲を広げられる余地があるという点にあります。
(2)高年齢者活用促進の措置の実施状況やそれに要する費用を負担した状況を明らかにする書類等を整備・保管し、地域障害者職業センター雇用支援課等(都道府県高齢・障害者雇用支援センター)から提出を求められた場合にそれに応じること
(3)高年齢者活用促進の措置の実施に要した経費を支払っていること

②助成額の内容
本助成金(コース)の支給額は、申請事業主が環境整備計画の期間内にかかった、次の(1)~(4)の高年齢者活用促進の措置の種類ごとに示した支給対象経費(※1)に、1/2(中小企業2/3(※2))を乗じて得た額が支給されます。
ただし、支給申請日の前日において当該事業主に1年以上雇用される60歳以上の雇用保険被保険者のうち、支給対象となる高年齢者活用促進の措置の対象となる者の数に20万円を乗じて得た額(その額が500万円を超える場合は500万円)が上限とされます。
※1 人件費を含みません。支給申請日までに支払いが完了したものであって証拠書類により支払いの事実が確認できるものに限ります。
 ※2 中小企業事業主の範囲については、「各雇用関係助成金に共通の要件等」のCを参照ください。

(1)新たな事業分野への進出等による高年齢者の職場または職務の創出
○詳細な実施内容を定めた計画(以下「実施計画」という)の策定に要した経費等具体例)実施計画の策定のための会議の設置および運営費職域拡大等の措置の実施企業、外部専門家、コンサルタント会社等を委員とし、実施計画の策定のために随時開催する会議に関する設置および運営に係る経費、会議参加者謝金、会場借上げ費等
(2)機械設備、作業方法または作業環境の導入または改善による既存の職場または職務における高年齢者の就労の機会の拡大の措置
○既存の職場または職務において高年齢者の活用を促進するために必要な既存の作業方法・作業環境の分析、事業所レイアウト変更などに要した費用
  具体例)倉庫業等において、高齢者の荷物運搬作業の負荷軽減のためフォークリフトを新たに導入したという事例のようなケース。導入したフォークリフトは高年齢者はもちろんですが、他の社員も活用することが可能です。
(3)高年齢者の就労の機会を拡大するための能力開発、能力評価、賃金体系、労働時間等の雇用管理制度の見直しまたは導入
○高年齢者の雇用管理制度の導入等に必要なコンサルタントへの相談経費等
  具体例)高年齢者活用のための短時間正社員制度と短時間正社員能力評価制度を導入するようなケースが想定されます。
(4)労働協約または就業規則による定年の引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象
とする継続雇用制度の導入
○定年の引上げ、定年の定めの廃止、継続雇用制度の導入等に必要な経費
 具体例)専門家等に対する委託費、コンサルタントとの相談に要した経費等

【3】受給手続きの流れ

高年齢者雇用安定助成金(高年齢者活用促進コース)の助成金の支給を受けようとする事業主は、必要書類を添えて、「高年齢者活用促進の措置」を内容とする環境整備計画書を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」といいます)に提出します(機構への提出は、主たる事務所または当該高年齢者活用促進措置を実施する事業所の所在する都道府県の高齢・障害者雇用支援センターを経由して行います)。
なお、環境整備計画書は計画開始日から起算して6か月前の日から2か月前の日までに提出する必要があります。
受給手続きの流れについては、以下のフローチャートをご参照ください。
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厚労省助成金パンフレットより