-第8回-リタイア後にもらえる年金① ~どの老齢年金が受取れるか~

老齢年金

公的年金からの給付は、

  1. リタイア後に受け取れる「老齢年金
  2. 病気やけがで障害状態になったときに受け取れる「障害年金
  3. 被保険者が死亡したときに遺族が受け取れる「遺族年金

以上の3種類です。今回は老齢年金を取り上げます。

原則は65歳から、誕生日により特別支給もあり

リタイア後に受け取るおもな公的年金には、年金加入者すべてが受け取る「老齢基礎年金」と、厚生年金に加入していた人が受け取る「老齢厚生年金」、共済年金に加入していた公務員が受け取る「退職共済年金」があります。ここでは、厚生年金加入者の例でご説明します。
まずは、自分がどの年金を受け取れるか「図-1」で確認してみましょう。

図1-あなたはどの年金が受け取れる?

まず、いずれかの公的年金制度に加入していて、受給資格期間(現在は原則25年、平成27年10月からは10年に短縮される予定)の条件を満たしている人は、「老齢基礎年金」を65歳から受け取れます。
老齢基礎年金をもらえる人で、厚生年金に1カ月以上加入していた人は、加入期間分の「老齢厚生年金」も65歳から受取れます。短期間だともらえないと勘違いしている人もいるようです。少しでも会社勤めしていたことがある人(厚生年金に加入していた人)は、ねんきん定期便の記録に間違いがないか確認し、請求もれのないように気をつけてください。

さらに厚生年金に1年以上加入していた人で、男性は1961年4月1日以前生まれ、女性は1966年4月1日以前生まれの人は、60~64歳の期間に「特別支給の老齢厚生年金」を受給できます。特別支給の老齢厚生年金は、誕生日ごとに受取り開始年金が異なります。「図2」で確認しましょう。

図2-特別支給の老齢厚生年金は何歳から受取れるか

たとえば、今年60歳になる1954年生まれの男性は、61歳から64歳まで「特別支給の老齢厚生年金(老齢厚生年金とほぼ同じ金額)」を受け取り、65歳になると、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を受け取れるのです。

また、この男性が過去に共済年金に加入していたことがあれば、その期間分の「退職共済年金」も受取れます。複数の制度に加入したことがある人は、どの年金も必ずもらえると覚えておきましょう(ただし、老齢基礎年金の受給資格を満たしていることが必要です)。

妻は年下が有利? 年金の扶養手当「加給年金」

「年上の女房は金の草鞋を履いてでも探せ」と言われます。年上の女性は気配りができるから、そういう人を選ぶと結婚生活がうまくいく、ということのようですが、公的年金い限っていえば、妻が年下の方が有利と言われています。

その理由は、年金を満額(老齢基礎年金+老齢厚生年金)受取っている人に年下の配偶者がいた場合、その配偶者が65歳になるまでの期間、自分の年金に「加給年金」が上乗せされるからです(図3)。加給年金が上乗せされるには、本人の厚生年金の被保険者期間が20年以上にあることが条件です。
加給年金の金額は、年間38万6,400円(2014年度価格)、月額で約3万円です。ちょっとしたおこづかいになりますね。

図3-64歳からもらえる公的年金

なお、配偶者が自分の年金をもらうようになったとき、その配偶者が厚生年金に20年以上加入していないなどの条件を満たせば、少額が加算されます(振替加算)。振替加算は1966年4月1日以前生まれの配偶者が対象です。

ところで加給年金の対象となるのは、配偶者。妻が年上で厚生年金に20年以上加入していた場合には、夫が65歳になるまで妻の老齢厚生年金に加給年金が上乗せされます。女性の社会進出が進んでいることを考えると、必ずしも妻が年下の方が有利とは限りません。

年金のことを考えると、「(厚生年金や共済年金に加入して働く)年上の女房は金の草鞋を履いてでも探せ」ということになるでしょうか。

コメント
今後の公的年金制度の変化に注目しましょう。

公的年金制度は、夫が一家の稼ぎ手で、妻は専業主婦か収入のパートという、「標準世帯」を念頭に制度設計されたそうです。ですから、「標準世帯」が多数派ではなくなりつつある日本の現状を考えると、おかしいと感じることも多いですね。現実に合わせるためにも、年金を含む社会保険制度も税制も、これからどんどん変わっていくのだろうと思います。

ところで、私が執筆、総合監修をした「相続のきほん」というムック本が、オレンジページ社から発売されています。
争いごととは無縁と思っていた「フツーの人」が、相続でどのようなトラブルや困りごとに直面するのか、豊富な実例と対処法をわかりやすく書いています。ぜひお手に取ってご覧ください。