趣味に旅行にと自分らしさを満喫するデジタルシニア
60歳以上の消費が日本の半分を占めるようになり、その消費動向は日本の景気にも大きな影響を与えています。2014年11月に日経MJが60~70代1374人に対して行ったアンケート調査によると、旅行などのレジャーや趣味、健康増進、食にお金をかけたい人が6~7割に上りました。時間の過ごし方でみても73%の人が上位3項目までに趣味と答えています。リタイアして仕事を持っていない人だけに限定するとその割合は77%とさらに多くなっています。
その趣味の中でも多かったのは旅行です。国内旅行は53%、海外旅行は24%の人が挙げています。特に、国内では山歩き、海外ではその国ならではの珍しい体験ができるツアーなど、非日常的な体験を求める傾向が強くなっています。観光名所を慌ただしく見て回るだけの旅行ではなく珍しい体験をじっくりと時間をかけて楽しむ旅行へのニーズは若い世代でも高まっていますが、より時間に余裕のあるシニア世代では、それを行動に移しやすいという事情もあるのでしょう。
シニアが趣味以外で費やす時間が増えていること
旅行などの趣味のように自分らしい過ごし方をすることに時間とお金をかける傾向は、趣味以外の消費でも見られます。たとえば、趣味に比べれば消費支出の少ないファッションでも、単なる機能性だけでなく、自分らしさを表現するファッション性を求めています。その結果、シニア向けであることを前面に出してアピールしたとたんに売れなくなることもあるそうです。シニア向けの機能よりも自分のファッションセンスを表現できるかどうかを重視するのでしょう。「シニア世代」という言葉よりも「大人世代」という言葉の方がシニアの受けが良いようです。そういえば、JR東日本のシニア向け割引会員の名称も「大人の休日倶楽部」ですね。
その他の時間の使い方としてシニアでも増えているのがネットです。趣味・習い事の中で2番目に多かったのが「パソコン・インターネット」の51%でした。情報収集の手段としてもテレビ84%、新聞81%、インターネット81%とインターネットは既存メディアと肩を並べています。もっとも、このアンケート調査はネットで実施されたものなので、もともとネットを活用している層が主な調査対象となり、統計の母集団にやや偏りが生じている可能性もあります。しかし、そうだとしても、今のシニアはネットへの抵抗が低くなり、情報収集や知人との連絡に、既存のメディアや電話と同様に自然に使いこなしていることは確かなようです。
シニアがネットを使いこなし、ネットを使う時間が増えてきたことで、ネットで消費をしたり、ネット仕事をして収入を得たりする、いわゆるネット経済圏が拡大する傾向にあります。健康食品や健康グッズのネットでの販売は増加を続けていますし、ネットで仕事を紹介するクラウド・ソーシングでもシニアの存在感は増しています。
日本最大級のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」が2013年6月に行った調査によると、4万人の登録者のうち50歳以上の占める割合は6.6%で、仕事の受注経験がある最年長は79歳。そして、これらシニアユーザーの3分の一が、クラウドソーシングを利用して毎月20万円以上の収入を得ていたそうです。(シニア活用.com「新しい働き方の提案-クラウドソーシングとは-」)
やはり強い「孫」への支出
また、お金の使い道としてその他に多いのは、孫に対する支出です。親にとって子供への支出は日常的な生活費ですが、祖父母にとって孫に対する支出は、特別な、いわゆる「はれ」のときの支出です。「はれ」のときのお金の使い方は日常の消費に比べて金額が大きくなります。先のアンケートでは、子や孫と一緒に楽しむこととしては食事が76%、ショッピングが56%となっており、孫と一緒に時間を過ごし、お金を使うことが祖父母の楽しみなっている現状が伺えます。
旅行を始めとする趣味に時間とお金を使い、ネットを活用して交流の幅を広げ、孫との消費を楽しむ今の「大人」。この動向が、日本の社会と経済に与える影響は、今後ますます大きくなっていくことは確かなことのようです。