市場拡大する団塊シニア向けファッション

市場拡大する団塊向けファッション

人口の多い団塊世代が60代となり、シニア市場は拡大を続けています。政府の家計調査によれば、2013年11月の2人以上の世帯で65~69歳の消費額が前年同月比8.3%増え、全世帯の伸び率(2.1%)を上回っています。その結果、60歳以上の世帯の消費額は全体の46.6%に達しました。つまり、日本の消費の約半分は60歳以上の人によるものということです。特に、団塊世代を中心とする60歳代前後は、まだまだ活動的で経済力もあるため、消費にも意欲的です。

ファッション性を求める団塊世代

優先的にお金を使いたいもの

シニア市場全体が成長する中、シニア層のファッションへの関心も高まっています。内閣府が実施した「高齢者の経済生活に関する意識調査」によれば、「優先的にお金を使いたいもの」(3つまで複数回答)という質問に対して、衣料品に使いたいと答えた人の割合は、平成18 年度から23年度までの5年間で1.6倍に増えています。

団塊世代は60年代のミニスカートやアイビールック、70年代のジーンズやニュートラを経験し、80年代のバブルも知っています。20代のころからファッションへの関心が高かった団塊世代は、シニアになってもファッションへの消費意欲は旺盛です。特に、女性は、会食や観劇など「お洋服」に気を遣う機会が多く、退職するとスーツを着て外出する機会が少なくなる男性よりもファッションへの関心が高いようです。

高いファッション性を維持しながら、今の体型に合った着心地や機能性も重視する。それが、今、団塊女性が求めるファッションです。

広がるシニア女性向けファッションブランド

三越伊勢丹は今年4月、60代前後の女性をターゲットにした新ショップ「メゾンドウーマン」を開店しました。三越伊勢丹がこのブランドに付けたコピーは「アクティブな大人の女性に着て欲しい」。そして、その後には、「さまざまなファッションや遊び、学び、そして感情を経験したファッション感度の高い大人の女性に向けたブランドです。」という説明が続きます。

実際、そのデザインにはさまざまな工夫が凝らされています。たとえば、「スカートは上下でプリーツの数を変えることにより、歩いた時に美しく揺れるようになって」いたり、「旅先や会食といった座るシーンが多いことを考えて、シワになりにくい生地を開発」したり、「気になるウエスト周りは、ギャザーの効果で視線を変えてみたり」、腕が隠れる丈にし、腹部にはゴムを入れて着心地を高めたりと団塊世代女性のライフスタイルと体型を考慮したデザインになっています。

また、生地選びから縫製まで一貫して三越伊勢丹が手掛けてコストを低減し、中心価格帯はワンピースで6万円前後とお手頃です。三越日本橋本店の店舗の14年度の販売目標は8,500万円とまだ少額ですが、販売が軌道に乗れば多店舗に展開する予定です。

シニア対応進む小売業

一方、カジュアルなファッションを手掛けてきた総合スーパーや通販でも、シニア対応を進めています。

たとえば、通販のニッセンは、70代のモデルだけを使ったファッション・ショーを行うなどシニア向けの品揃えとプロモーションを強化しています。団塊世代は数年後には70代になります。将来の需要拡大を見越した通販各社のマーケティング戦略が本格化してきました。

同様に、イオンもシニア女性向けに、デザイナー島田順子が手掛けるハイ・ファッションのブランド「パート2」を展開するとともに、PB商品である「トップバリューセレクト」で70代向けのカジュアルな婦人服を揃えています。「トップバリューセレクト」では、文化服装学院と連携し、シニア女性の3次元体型データを収集・分析してファッション性と着心地の良さを追求しています。因みに、そのコピーは、「ここちよい服、つくりました」です。14年度の販売目標は20億円、15年度には30億円を目指しています。

このようなアパレル各社のシニア向け商品の拡充は、団塊世代の消費意欲をさらに掻き立て、その消費額をさらに増加させるという相乗効果が生んでいます。これは、売上が増加するアパレル各社にとってもファッションの選択肢が増えるシニアにとっても好ましいことです。そして、シニアの消費性向が上がって景気回復につながれば、国民経済全体にとっても朗報です。今後の団塊世代向けファッションの成長に期待しましょう。