起業に仲介、広がるシニアの活躍の場
まだまだ元気に活躍できるアクティブシニアが増える中、シニアのスキルと労働力を活かそうとする動きが広がっています。
増加するシニア起業家
そのひとつは起業支援です。三井住友海上が7月に開催した起業家育成塾の受講者の多くは40代、50代でした。ビジネス経験があり、社会で通用するスキルを既に身に着けているシニアは、起業家予備軍の中心となっています。
特に起業家に占める60歳以上の割合は年々増加する傾向にあります。(ゆる起業―第二の人生を自分らしく生きるために―)中小企業庁の中小企業白書2014によれば、その割合は1982年8.1%、1992年14.2%、2002年24.6%、2012年32.4%と30年で4倍に増えました。さらに50歳代まで含めると2012年で46.7%と半分近くに達しています。
これについて、中小企業白書2014は、
シニア層は若者に比べて自己資金が豊富であり、社会経験を蓄積しているとともに、退職後も何らかの形で働き続けたいと希望する者が多い。その一つの選択肢として、起業を選ぶ者が存在するため、シニア層は起業の動機が明確であり、かつ、その意欲も高いと推察される。
と分析しています。
一方で、起業した後に得られる収入はそれほど多くないというのも日本の自営業の現状です。中小企業白書2014の統計では自営業主の個人所得は年収300万円未満が80.7%、大半の起業家が大企業の管理職の4分の1以下の収入ということになります。定年が65歳まで延長されてきている昨今、安定した収入を得るという観点からは定年まで勤めた方が有利なのかもしれません。
しかし、起業には会社勤めにはない魅力があります。中小企業庁の起業の動機に関するアンケートによれば、「『自分の裁量で仕事がしたい』、『年齢に関係なく働くことができるから』、『性別に関係なく働くことができるから』を選択する割合が比較的に高くなっており、性別や年齢の枠に捉われずに、自分の裁量で働きたいという、シニアの傾向が明らかになった。」ということです。
一般に、起業において重要なのは、好きなこと、得意なこと、市場性の三つの要件が揃った仕事をすることだと言われています。得意なことを活かして好きなことを行い、それが市場から評価されることの喜び、それがシニアの起業家を支える原動力なのでしょう。(シニアの新たな「働く」選択肢-シニア起業-)実際、中小企業庁の調査でも、「60 歳以上の起業家については、それまでの職歴を活かした経営コンサルタントや営業代行等のサービス業の割合が高くなっている」ことが示されています。
このシニアの起業意欲の高まりに呼応するように、起業を支援する企業や団体が増えています。民間企業の他、政府系金融機関や全国の自治体にある起業支援センターもサポートしています。これらのサポートにより、シニア起業家は今後とも増え続けるでしょう。
多様化するシニアの働き方
もうひとつのシニア活用の動きは、企業へのシニア人材の紹介です。年齢不問の求人サイト「シニア活用.com」のように年齢を問わず特別なスキルを持った人材を求めている企業とそのスキルを持ったシニアのマッチングをサービスする企業が増えています。
働き方も常勤、フルタイムだけでなく、週1日だけ業務委託として仕事をするなど、その形態が多様化しています。たとえば、1日5万円で月4日働いて月20万円を業務委託料として得るという形態です。1契約当たりの収入は少ないですが、複数の企業と契約すれば、ある程度の収入になります。また、企業からコンサルタントとして認知されるレベルの価値提供ができれば、単価も1日10万円以上と高くなります。
さらに働く時間を小刻みにして、1回の打ち合わせごとに相談料を受け取るという形態もあります。2、3時間の打ち合わせ1回につき3~4万円の相談料を受け取るというものですが、これなら、コンサルタントを雇うことの難しい中小企業でもノウハウを持ったシニアの知恵を借りることが容易になります。
このような働き方の多様化は、企業とシニアのマッチングの可能性を、今後、さらに高くしていくことでしょう。