選択肢広がるシニア向け住宅-多様化する住居ニーズ-

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高齢化社会の進展に伴い、量的な拡大を続けてきたシニア向けの住宅市場ですが、ここにきて、質的な選択肢が広がりをみせてくるようになってきました。

従来から課題となっている介護を必要とする高齢者の入居施設の整備が、今後とも重要な社会問題であることに変わりはないでしょう。しかし、高齢者のニーズが介護だけというわけでもありません

高齢者の中でも、健康状態がよく活動的な生活を送っているいわゆるアクティブシニアの人々が快適に暮らすことのできる住宅これも高齢化社会が求める社会的なニーズです。

このニーズに応えるため、たとえば、UR賃貸住宅は、シニア向け賃貸住宅として、既存の団地を改造した「高齢者向け優良賃貸住宅」や「高齢者等向け特別設備改善住宅」、新築も含めて整備する「URシニア賃貸住宅」、「シルバー住宅」などを供給しています。日本住宅公団の時代に建設された古い団地をシニアが住みやすい街に再生しつつ、シニア向けの新たな住宅の建設も進めています。

高齢者向け優良賃貸住宅」は、床の段差をほとんどなくし、要所に手すりを付けるなど室内での安全に配慮した住宅です。「高齢者等向け特別設備改善住宅」は、高齢者や障がい者の方向けにやはり室内の段差をなくす他、連絡通報用設備も設置されています。また、「URシニア賃貸住宅」は、高齢者のための安全性を考えた温水式床暖房などの最新の仕様と設備を備え、フロントサービスや健康管理サービスなどの生活支援システムが充実しています。さらに、「シルバー住宅」では、生活援助員が緊急時対応や一時的な家事支援等を行います。

これらのシニア向け賃貸住宅が地方自治体や中ば公的な機関であるUR賃貸住宅によって整備されている一方で、シニア向けの分譲マンションも供給されるようになってきました。

たとえば、千葉市で開発が進むスマートコミュニティ稲毛は、複数のシニア向け住宅棟とクラブハウスやグラウンドを備え、スポーツや趣味、カルチャーなど多彩なサークル活動も用意して、街全体を高齢者が過ごしやすい住環境に整えています。

また、マンション開発のフージャースホールディングスは、専門会社を設立して年間2棟程度のシニア向け分譲マンションを供給することを計画しています。既に販売を開始したつくば市のマンションは、温泉大浴場やレストランなどの共用施設を備え、室内も廊下を広くし、扉を引き戸にするなどシニア向けの配慮がなされています。

これらの分譲マンションは、老人ホームに比べて入居する際の費用が高い傾向にありますが、都市部にファミリー向けの戸建てやマンションを持ち、子育てが終わったシニア層にとっては、買い替え物件として無理のない価格の不動産であるともいえます。子供部屋がなくなって部屋が狭くなるかわりにシニア向けの設備を付け、それでも少しおつりが残るという感じです。また、分譲マンションには所有権があり、老人ホームとは違って所有者が亡くなった後は、遺族が相続するというのも魅力のひとつになっています。

シニアといってもその実像は一様ではなく、住居に求めるニーズは多様です。老人ホームだけでなく、シニア向けの賃貸住宅や分譲マンションなど様々な選択肢が生まれてきたことは多様なニーズに応える上で歓迎すべきことです。より多くのシニアが自分に合った住空間を見出せる社会、それが、豊かな高齢化社会が目指す、目標のひとつではないでしょうか。