課題は「都有地活用」-新都知事の高齢化対策-

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特別養護老人ホームの整備に都有地を活用

舛添要一都政がスタートしました。

厚生労働大臣を務めた経験もある新都知事は、その経験を活かし、少子高齢化対策を重点政策のひとつとしてあげています。
その手腕を期待して一票を投じた方も多かったのではないでしょうか。

都知事は、就任時のインタビューで、都有地を活用した保育所や特別養護老人ホームの整備という方針も打ち出しました。
確かに、まとまった土地がないこと、あったとしても賃料が高いことは、東京都などの都心部において福祉施設整備の進まない大きな要因に違いありません。
それを、都が安い賃料で土地を提供できればあるのは、阻害要因がひとつなくなることになります。

そう思って、東京都が保有する土地の活用状況は…と思って調べ始めましたら、実はこの種の活用は既に進められていることがわかりました。
「都有地活用による地域の福祉インフラ整備事業」として、平成15年から広さや立地が適当な未利用の都有地を貸出が行われており、昨年度末までに高齢者施設28、障害者施設13、保育所4が設置されているそうです。
新都知事が就任した直後の2月14日にも、目黒区での認可保育所での整備・運営の事業者公募がかかっていました。
舛添知事もこの状況を確認したようで、初の定例会見では「都有地は、近くて便利なところは既に借りられており、若干条件の悪いところしか残っていない」とコメントしています。
「(福祉施設に適するような)500平方メートル以上の広さとなると、多摩地域の山林も含めて全体で約90カ所に絞られ、JR山手線より内側には、ほぼない」(東京都担当者のコメント、産経MSNニュース2013/2/10)というのが現実のようです。

国有地は使えるのか?

そこで次に知事が打ち出したのが国有地の活用です。
例えば都心部に立地している国家公務員の宿舎跡地などを利用をしていけるよう、国側との合意をとったと会見で述べていました。
しかし、実はこれも目新しい話ではありません。
国は「新成長戦略における国有財産の有効活用」(平成22年6月)において、地域や社会のニーズに対応した国有財産の有効活用を推進する観点から、保育・介護・医療など人々の安心につながる分野で国有財産を積極的に活用するという方針を打ち出し、定期借地制度を利用した貸付スキームや、社会福祉法人への直接貸付制度の整備などを行っています。
すでに、世田谷区などの地方公共団体等との間で、11か所の国有地を社会福祉施設等として貸付又は売却することが決まっているそうです。

既存施設なども活用。待機者への対策は急務。

これらの制度をより使いやすいものにするなどの取組みは必要と思われますが、残念ながら都有地も国有地も画期的な目新しい土地の手当ての方策とはいえないようです。
杉並区が静岡県の南伊豆町の廃園になったぜんそく療養所を区域外特別養護老人ホームとして活用するなど、独自の取組みも見られるようになってきています。
東京都にある特別養護老人ホームの定員約4万人に対し、入居待機者は2010年度の調査で約4万3千人。高齢化進展に伴う入居希望者の今後の増加を考えると、現状の枠組みの中だけで考えているだけでは、とても整備は間に合いそうにありません。
新都知事の手腕に期待するとともに、官民を挙げての取組みも必要になってくると思われます。