ますますニーズ高まる宅食事情

takushoku

市場規模は前年比17%増の約850億円。シニアの利用率は1割ほど

「ワタミの宅食」「セブンミール」「食卓便」「モンテ宅食」「まごころ弁当」…シニア向けの食事の宅配サービス、いわゆる「宅食」がブームとなっています。
2012年度の市場規模は前年比17%増の約850億円(富士経済推計)。
新規参入も相次いでおり、昨年・今年とさらに市場規模は拡大しているものと思われます。

 実際にシニアがどのくらい利用しているかというと、「米飯類、調理パン、調理めん」や「惣菜(おかず、副食)」を月に一度以上購入するという人の割合は7割前後に達していますが、
「宅配食事サービス」は、1年以内に購入なしという人が9割近く。
現状では、利用しているのは限られた層であると思われます。(楽天リサーチ「シニアの惣菜購入に関する調査」2013年8月)

 高齢者向けの弁当宅配といえば、かつては地域の福祉協議会やNPOなどが、食事作りが困難な高齢者に食事を届け、同時に安否などを確認するという、行政福祉サービスのひとつでした。
今でも各自治体でこのようなサービスは行われており、例えば中央区では
「中央区にお住まいで、健康上の理由や身体的事情などにより、買い物や食事作りが困難な70歳以上の方及び、要支援・要介護に認定された65歳以上の方で、ひとり暮らしの方、家族全員が70歳以上の世帯の方、同居の家族が就労等のため昼・夕食時は一人になる方」に対し、和食中心の食事を1食あたり400円(料金の一部を区で補助)で提供しています。

 これに対し、冒頭のような民間事業者によるサービスが本格化してきたのは、ここ10年ほど。
ワタミが2008年に高齢者向け弁当宅配事業を手がけるタクショクを買収し、外食産業で培ったノウハウを活用して参入したのがきっかけです。
ワタミが積極的な広告宣伝活動を行ってきたこともあり、健康志向の一般シニア層にまで、「宅食」が認知され市場も拡大してきているのです。
 とはいっても、最大手の「ワタミの宅食」の販売実績は約28万食、セブンイレブンが展開する「セブンミール」の会員数も40万人だそうですから、
3000万人を超える65歳以上人口と比べると、やはり利用者はまだ限られていることが伺えます。
忙しい、少量作るのは却って手間もお金もかかる、献立を考えるのが面倒くさい…「宅食」に興味がなくはないけれど、毎日の食事ですし、自分で作れるうちは作って好きなものを食べたい、ですよね。

自炊が困難な高齢者が急増

一方で、年齢を重ねると身近に料理をしてくれる人がいなくなってしまったり、自分で料理をするのが困難になっていくというのも現実です。
厚生労働省の調査では、「料理で困っていることがある」という男性の割合が、65-69歳では59%なのに対し、70-74歳では75.9%と急増しているというデータもあります。
(厚生労働省「地域高齢者の食生活支援の質および体制に関する調査研究事業」2013年3月)
「宅食」が今後も成長が期待できる市場であることには間違えないでしょう。
ただ現状は、「介護食を除けば食事提供に関するノウハウが少ないため参入障壁が低く、新規参入が相次いでいる」一方で、
「食事だけでなく安否確認や家事・買い物代行などのサービスを合わせて提供することで独自性を打ち出そうとしているが、決定的な差別化にはつながっていない」という状況とのこと
(富士経済「高齢者向け食品市場の将来展望2013」)。
今はまだ…という方も、将来の利用を見越して、今から色々なサービスを試しておくのもよいかもしれませんね。