いまどき「肉食シニア」実態は?
高齢者の5人に1人!新型栄養失調。
『新型栄養失調』という言葉をご存じですか?
食事の摂取カロリーは十分に足りているのに、動物性タンパク質やビタミン、ミネラルが不足している状態のことを指し、筋肉が衰えて転びやすくなったり、免疫力も低下し、肺炎や心臓病、脳卒中などに罹りやすくなってしまいます。
なんとなくだるい、疲れやすいといった程度でさほどの自覚症状がない場合も多く、70歳以上の高齢者の5人にひとりがこの新型栄養失調であるとも言われています。
原因は「ヘルシー」過ぎる!?
健康維持に努め、食生活には気を使っているはずのシニアが、なぜ栄養失調に陥ってしまうのでしょうか。
それは、ヘルシー「すぎる」食事にあるらしいということが、徐々に明らかになってきています。
一般的に、健康的な食生活というと、肉や脂っこいものを控えた野菜中心の食事を思い浮かべます。
中高年の肥満防止、メタボリックシンドローム対策には、このような食事が適しているのは言うまでもありませんが、
ある年代から上の高齢者は、逆にもっと肉を食べるべきだというのです。
野菜中心のヘルシーな食事を続けると、タンパク質が不足してきます。
タンパク質が不足すると、筋力が衰えたり、赤血球が不足して免疫力が低下します。
すると、貧血や心臓病、脳出血、感染症、骨折などのリスクが高まるという訳です。血液中のアルブミン(タンパク質の一種)値の低い人ほど、冠状動脈硬化性心疾患(いわゆる心筋梗塞などの心臓疾患)の発症および死亡の危険率が高くなるという研究結果も発表されています。
「もともと日本には昔から「粗食は長寿の秘訣」というような考え方があり、肉や牛乳、脂っこいものなどを中心とした欧米型の食生活は、昔なら痛風、今ならメタボリックシンドロームの元凶であると嫌われる傾向にあります。(中略)昨今の日本では、「栄養過剰」が悪のように言われていますが、高齢期ではその逆なのです。この点はまだ一般には誤解されているといわざるを得ません」(高齢者栄養研究会 ホームページより)
高齢期に適した食生活とは?
確かに、元気な高齢者の方々は皆さんは何でもよく召し上がります。
私事ですが、80歳を超える私の母は幸いにして医者知らずですが、月に一度はトンカツが食べたくなるのだそうです。
以前このコラムでもご紹介した、マスターズ陸上で100メートルの世界新記録保持者という90歳の方の練習の日の食事は、
朝食は豚肉に卵、昼食にウナギと、私だったら完全に栄養過多になってしまうな…と感じるものでした。
では、何歳ぐらいまではヘルシーな食生活を心掛け、いくつぐらいから肉などのタンパク質を摂取することを意識すればよいのか…
それまでの食生活や活動状態は人によって異なりますので、なかなか一概に言うのは難しそうですが、60歳になったら粗食は考えなくてよいという専門家もいるようです。
意外にお肉好き?いまどきシニア
シニアの皆さん、もっとお肉を食べましょう!…と思いましたら、昨年博報堂が行った調査では、60代で肉料理が好きだという人の割合は82%に達しており、
魚料理(88%)、野菜料理(87.7%)と比べても大差なかったとのこと(博報堂 新しい大人研究所 2013年9月)。
年を取ると脂っこいものは食べたくなくなる、というのは過去の話なのかもしれません。
そうなると新型栄養失調の心配はだんだんと減っていきそうですが、一方で、メタボを気にしなければならない期間が長くなりそうな気もしないではありませんね。