高齢者の就業状況
勤労感謝の日に合わせ、総務省から「女性・高齢者の就業状況」が発表されました。60歳以上の高齢者の有業率(有業者の割合)は30.7%。都道府県別にみると、長野県(36.3%)、山梨県(36.0%)、福井県(34.1%)、東京都(34.1%)などが上位に並んでいます。なぜこのような県で高齢者の有業率が高いのか、何か共通点があるのかを考えてみました。
今回発表されたデータは高齢者を60歳以上としていますが、元になっている「就業構造基本調査」では65歳以上での括りのほうが主となっています。
そこで、まず65歳以上の有業率をとってみました。すると、全国平均では21.3%と、60歳以上の数字と比べると10ポイント近く低くなります。高齢者の活用、就業機会の拡大が言われていますが、現実に仕事をすることができているのは、高齢者の中でも若手である60歳代前半に限られていることがうかがえます。
都道府県別のデータに戻りましょう。65歳以上の有業率でも、上位の顔ぶれはさほど変わりません。トップは長野県で27.8%、2番目も同じく山梨県で26.5%。3位には東京都が入り24.8%。福井県と島根県(60歳以上の有業率では33.0%で7番目)が24.1%で続いています。ここでいう「有業者」は、ふだん収入を得ることを目的として仕事をしている人、ですが、商店や工場、農家などで家の仕事を無給で手伝った場合も、仕事をしているとみなされます。ということは、長野県や山梨県は農業人口が多いために全体の有業率も高くなっているのではないか?農家の高齢化も言われているし…と思い、産業別の数字を見てみました。
65歳以上の有業者の中で、一次産業に就いている人の割合は、長野県が全国9番目の35.4%で山梨県は32.2%と16番目。全国平均が17%ですので、多い方であることには間違えありませんが、上位の青森県(43.1%)、鳥取県(42.2%)、岩手県(39.5%)などと比べると、高齢者で仕事をしている人の多くが一次産業に就いている、とは言い切れないようです。ちなみに、当然のことながらこの割合は大都市を抱える都府県では非常に低く、東京都は1.4%、大阪府でも1.6%となっており、
この一次産業に就いている人の割合ですが、15歳以上の有業者全体で見ると3.8%に留まり、最も割合が高い青森県でも12.9%。農業をはじめとする一次産業が、いかに高齢者によって支えられているのかを、改めて考えさせられる数字です。
仕事をしたくても仕事があるのかという雇用機会の問題があるのはもちろんですが、元気でなければ働きたくても働けません。元気だから仕事を続けられているのか、仕事をしているから健康も保たれているのか… 鶏と卵のようではありますが、高齢者の健康に関連して、都道府県別の一人当たりの老人医療費も見てみました。(厚生労働省「後期高齢者医療事業報告」平成23年)。
長野県は下から4番目の78万3千円と高齢者医療費も少なく、山梨県(83万円)や東京都(90万3千円)は若干多いものの、高齢者有業率上位の都県の医療費は全国平均の91万8千円を下回っています。やはり仕事を続けるにも健康の維持は欠かせないようです。そういば、長野県は男女ともに平均寿命が日本一の長寿県としても知られていますね。