高齢者の孤食


「食欲の秋と言われても、食べられる量も減ったし…」
「忘年会なんてとんとご無沙汰だな…」
こんな方々、要注意です。ひとり暮らしの65歳以上の高齢者のうち、独りで食事をする男性はうつになりやすい、という研究結果が発表されました。
ひとり暮らしでも誰かと一緒に食事をとっている人に比べ、独りで食事をする“孤食”の男性は、うつを発症するリスクが2.7倍高いことが、統計的に明らかになったというのです(日本老年学的評価研究 東京大学谷友香子研究員らによる)。ちなみに、女性だとうつの発症のしやすさは1.4倍だそうなので、男性のリスクの高さが際立ちます。
好きでひとり暮らしをしている訳ではない、ひとり暮らしになってしまったら食事もひとりで取らなくては仕方ないだろう、という声も聞こえてきそうです。ですが、食事には相当気を配る必要がありそうなことが、別な調査結果からも見えてきます。

・ 家族と同居する高齢者の9割以上は「1日3食」取っているのに対し、ひとり暮らしの高齢者では「1日2食以下」が2割近く
・家族と同居する高齢者のほとんどがほぼ決まった時間帯に食事をとっているのに対し、ひとり暮らしの高齢者は「その日によって変わる」人が1割以上
・1週間に自宅で手作り料理を食べる回数は、家族と同居している場合は「週に10回以上」が9割以上を占めるが、ひとり暮らしだと7割
・惣菜や弁当を「週に2回以上」利用する人の割合は、ひとり暮らしだと約半数
(日本能率協会総合研究所 「食生活と食意識に関する調査」2015年9月)

 これらのデータだけを見ると、まあひとり暮らしの食事だったら仕方ないかな、と考えてしまいそうですが、この食生活、実は20代のひとり暮らしの若者に近い、のだそうです。 
食事の回数や時間に関しては、20代のひとり暮らしの若者は「1日2食以下」が3割以上に達していますし、決まった時間に食べていない人も4割近くいますので、高齢者のほうが規則正しさを心掛けていることは伺えます。しかし、「同じようなメニューの食事が続くことがよくある」という割合は、ひとり暮らしの高齢者と20代ひとり暮らしでほぼ同じ(35%程度)ですし、惣菜や弁当の利用が週2回以上という割合は、高齢者のほうが多くなっています。
この調査では、ひとり暮らしの高齢者の食が“若者化”している傾向がある、と分析しているとおり、「近頃の若いものは、食事もろくに取っていない」というお小言は、どうやら言えそうにはありません。
栄養バランスが崩れ、体調に影響をする、というだけではなく、うつ症状にも繋がりかねないという食生活。普段はひとり暮らしで孤食だとしても、積極的に友人たちと食事をしたり、会食の機会に参加したり、ということが欠かせないようです。

「週に1度でいいから、笑って食事できる環境をつくること。居心地のいい居酒屋や定食屋の常連になり御客やマスターと世間話をしながら食べる。お笑い芸人が出て居るテレビ番組をみながら食べるのもいい」
(医学博士 米山公啓氏 日刊ゲンダイ 2015/10/31)

だそうですよ。