コンピュータ VS 人間ー将棋電王戦FINALから見るコンピューターとの戦い方
コンピュータと人間は、どちらが賢いのか?最近またそんなことを考えさせられるニュースがありました。
プロ棋士5人と5種類のコンピュータ将棋ソフトが対戦する「将棋電王戦FINAL」が行われ、2対2の第5局でプロ棋士が勝ち、3年目にして初めて勝ち越しを決めたというのです。昨年、一昨年はプロ棋士が負け越しており、日本将棋連盟の谷川浩司会長も「棋士の勝ち越しにほっとしている」とコメントしています。(毎日新聞 2015/4/11)
実は個人的に将棋に興味があるという訳ではなく(詰将棋もできません…)、コンピュータが進化して、現在私たち人間がやっている仕事の多くがコンピュータで代替されるようになる、という議論の象徴的な話題のひとつとして、チェスや将棋のプロとソフトウェアの対決というニュースに目が留まるのです。
この手の話題が最初に騒がれたのは1997年。世界最高のチェスの名手と言われるガルリ・カスパロフが、IBMが1000万ドルを投じて開発したスーパーコンピュータ“ディープブルー”に敗れた、というものでした。ただ、当時の一般的な見方は、そんな賢いコンピュータもあるんだ…、そんな時代になったんだな…という程度のものだったと思います。
が、今や、人間をはるかにしのぐ情報処理能力を持つコンピュータが勝つのは当たり前のようにもなってきました。チェスにおいては、人間対コンピュータだといつもコンピュータが勝つようになっておもしろくなくなったために、現在では人間とコンピュータを自由に組み合わせてよいという、フリースタイルのトーナメントが行われているそうです。
将棋の電王戦は、1年に1戦ずつ5年間で計5回の対戦を行うという予定で、2012年にまず、当時日本将棋連盟会長だった米長邦雄・永世棋聖とボンクラーズというソフトウェアが対決。ボンクラーズが勝利を収めました。この結果の衝撃が大きかったのか、1対1での対戦は撤回され、2013年からは、プロ棋士5人対5つのコンピュータソフトという団体戦となりましたが、2年連続でコンピュータソフトが勝利。
そして、今回のFINALは、文字通り5対5の団体戦という形式で行う最後の勝負とされたため、棋士側は必勝を期していたようです。
出場者も、若くて「コンピュータになじみがあり、ソフトを十分に研究できると見込んだ」5人を選出。選ばれた5人の棋士たちは、「定期的に勉強会を開き、ソフトの特性について情報を共有」して、研究を重ね、対策を練って対局に臨んだのだそうです。(日本経済新聞 2015/4/14)
今回の結果に関しては、棋士側が、敢えて隙を作ってソフトを誘導したり、成れる角をわざと成らずにソフトのバグを誘発したり、という作戦を取ったことで、その姿勢を批判する声もあがっているそうですが、一方で、コンピュータが相手なのだから、コンピュータが苦手とする展開に持ち込むのは当然という声もあるとのこと。将棋の世界の価値観は、それはそれであることでしょう。
ただ、客観的に人間対コンピュータの対戦としてこの結果を見ると、コンピュータがどんどん進化しても、人間はその裏や隙をついたり、コンピュータにできること・できないことを判断して相対したりできるのだな、と思い、少し安心したりもします。もちろん、それができる人はごく限られた人々だけなのだろうと思いますが…