シルバー人材センターの現状と課題

シルバー人材センター

高齢化の進展に伴い、高齢者が高齢者を支える場面も増えてきました。高齢者に社会参加や地域貢献の場としての軽易な仕事を提供する組織であるシルバー人材センターについては、以前このコラムでも紹介しましたが、その仕事の場がひとり暮らしの高齢者世帯の増加に伴い広がっているのです。

「高年齢者が働くことを通じて生きがいを得ると共に、地域社会の活性化に貢献する組織」で、地域の家庭や企業、公共団体から仕事を受注し、会員として登録されている高年齢者の中から適任者を選んでその仕事をしてもらうという仕組みを管理しており、原則として市(区)町村単位で設置されています。基本的には公益法人なので、シニア向け公的アルバイトあっせん業者といったところでしょうか。(「ご存知ですか?-シルバー人材センター- 」シニア活用ドットコム)

多種多様なシルバー人材センターでの取組み

多くのセンターで行われているのが「ワンコインサポート」。例えば、水戸市では75歳以上のみの世帯などを対象に、100円で電球の交換、ゴミ出し、洗濯物干し、植木の水やりなど。500円で資源ごみの分別、手紙の代筆・代読、日用品の買い物、クリーニング出しなどを請け負っています。地域によって、対象となる世帯や請け負う仕事の内容は若干異なりますが、生活の中の困りごとを手助けするというスタンスで、概ね会員ひとりが、30分以内でできる作業が目安となっています。同様のサービスを行ってくれる街の便利屋さんなどもありますが、手間賃が100円で済むことはありませんし、高齢者にとっては同じような世代の人が手伝ってくれるというのが、安心感にもつながるようです。

また、福井市、南丹市、大津市など、シルバー人材センター自らが、訪問介護や通所介護サービス事業を運営しているところもあります。

全国で初めてシルバー人材センターが運営するデイサービス施設として開設された福井市の“ひだまりの家”では、77歳~93歳の約30人の利用者を、看護師やヘルパーの資格を持った60歳以上の会員が支えており、「介護する側、される側ともに高齢者同士で話が合い、気持ちも分かり合える。」(2014/10/7 福井新聞)

というメリットがあるそうです。

高齢者同士が助け合うだけでなく、高齢の親を持つ現役世代のサポートを行う取り組みも始まりました。北九州市、大牟田市など福岡県内の4つのシルバー人材センターがこの10月から開始した「親孝行代行サービス事業」では、遠方で暮らす子供の依頼を受け、高齢者宅にシルバー人材センターが会員を派遣。安否確認や庭木の剪定・買い物といった家事援助や訪問時の写真などによる近況報告を行うとのこと。全国の政令指定都市の中で高齢化率が最も高いという北九州市ならではの取り組みですが、今後県内から九州全域、ひいては全国のシルバー人材センターにも参加を呼び掛けていくとのことです。

減少するシルバー人材センターの会員数

シルバー人材センターの事業が広がるにつれ、問題となってくるのが人手の確保です。全国シルバー人材センター事業協会の統計によると、センターに登録する会員数は、2009年の79万人をピークに減少傾向にあり、2013年の会員数は73万人を割り込みました。企業に65歳までの雇用延長が義務付けられたことや、高齢者を積極的に雇う企業が増え担い手が減っていることもありますが、センターの事業は営利目的ではなく、会員も有償ボランティアとして活動していることから、高齢者にとって収入源の確保にはつながらないという点が大きいようです。

シルバー人材センター会員数推移
参照:「全国統計(平成25年)」シルバー人材センター事業協会

生活に余裕があり、自分の経験を活かしたり、地域社会に貢献できたりすることが目的でよいという高齢者ばかりではありません。年金だけで暮らしていけないとなると、収入の確保は必須にもなってきます。今後のさらなる高齢化社会に向け、シルバー人材センターのあり方や事業展開も問われてくるのかもしれません。
公益社団法人 全国シルバー人材センター事業協会