年功序列-見直しが迫られる日本の雇用システム-

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年功序列の賃金体系の見直し機運が高まっています。日立製作所が、管理職の賃金を年齢や勤続年数と課長や部長といった「ポスト」に応じて支給したものを、役職ごとに目標を設けその達成度合いを踏まえて決める世界共通の制度とする、と発表しました。

年功序列賃金の廃止は国際標準への切り替えと言えば、いかにも先進的である。たしかにそうした一面はあるのだろうが、真意は総人件費の抑制措置にあるのではないのか。(10月9日 麹町ポスト「日立製作所が年功序列賃金を廃止」)

さらに、政府、経済界、労働界の3者の代表者が雇用や賃金について議論する「政労使会議」では、安倍晋三首相が「子育て世代の処遇を改善するため年功序列の賃金体系を見直し、労働生産性に見合った賃金体系に移行することが大切だ」と述べ、来年春の労使交渉では年功序列賃金の見直しが焦点のひとつになってくるのでは、とも言われています。

意外なことに日本だけではない「年功序列賃金

年功序列賃金は、終身雇用と並んで日本型雇用システムの象徴と言われます。しかし、年齢に応じて賃金が上がるというのは、必ずしも日本だけではありません。29歳以下の賃金を100とした場合の50-59歳の層の賃金は、日本では1.9倍ですが、ドイツでは2.0倍、オランダでも1.8倍と、日本と同様の格差がある国も少なくはないのです。

同じように、勤続年数と賃金の関係で見ても、ヨーロッパ諸国も日本も勤続年数に応じて賃金も上昇していきます。ただし、ドイツやフランスでは勤続年数による賃金上昇のペースがほぼ変わらないのに比べると、日本の特徴は勤続10年以上、特に15年を超えると賃金上昇率が拡大することが特徴といえそうです。

勤続年数による賃金格差
参照:「データブック国際労働比較2013」労働政策研究・研修機構より

年代で変わる日本の一企業での勤続年数

では、日本の労働者の一企業での勤続年数が極端に長いのかというと、平均すると男性で13.3年。アメリカは4.7歳と極端に短いのですが、ヨーロッパ諸国でも10年を超える国がほとんどで、イタリアは13.6年と日本より長いのです。ただ、全年齢の合計の勤続年数では人口の高齢化などの要因も関わってきてしまうため、年齢階級別の平均勤続年数で見ると、若年層では日本もヨーロッパ諸国もあまり変わりはないのですが、35-54歳の層になると日本の男性の勤続年数は国際的に見て長いというデータになるそうです。

性・年齢階級別平均勤続年数の国際比較(2011年)
出典:平成25年版 労働経済の分析「性・年齢階級別平均勤続年数の国際比較(2011年)」厚生労働省より

年齢があがり勤続年数が長くなると、一般的には技能が蓄積され仕事の熟練度もあがると考えられますから、それに応じて多くの賃金が払われるというのは当然であり、国際的にも特殊な傾向という訳ではありません。

ドイツの現業労働者は、一企業単位ではなく、職種ごとに労働協約がありその中で労働者の熟練度に応じて賃金等級が設けられているそうです。このような、賃金等級の元となる熟練度などの設定が、日本では曖昧なことも多く、ほぼ勤続年数やポストでしか捉えていないために「年功序列」と言われるのではないでしょうか。職種ごと・等級ごとに求められるスキルレベルが明確化されていないと、企業によって評価に差がでることも多いため、敢えて職場を移ろうとはせず「終身雇用」となっていく、という一面もあるのかもしれません。

日本型雇用システムは、根本的なところからの見直しが迫られているようです。