バス運転手不足-顕在化してきた高齢化する職業-

高齢化する職業

8月、NHKのニュースでバス運転手の意識消失事故の検証をしていました。バスは私たちにとって非常に身近な交通機関ですが、その運行の安全性確保のほとんどの部分を運転手さんが担っています。

問われる企業の管理責任

鉄道には信号と連動した制御システムが備わっていますが、バスの衝突防止装置は、高速バスなどの大型バスに対して今年の11月から装着が義務化されるという段階です。しかし、ひとたび事故に巻き込まれれば、というより、唯一制御を担っている運転手を失えば、乗客が命の危険に晒されることは、多くの事故のケースを見るまでもなく明らかです。

ニュースでは、運転手の体調急変に伴う事故を起こしたバス会社から国に提出された「自動車事故報告書」の4年分、210件の内容を分析した結果、事故の原因になった病気と、運転手の事前の健康診断で見つかっていた異常との関連性があるケースが、全体の3割近くあったことを取り上げていました。

確かに、健康診断で見つかった異常を放置したことが事故の原因につながるというのは、人命を預かる仕事をするもの及びその監督者である企業の管理責任が問われても当然です。しかしながら、健康診断での異常を放置して仕事中に病気を発症する人は世の中に少なくはないと思いますし、関連性があったのが3割という数字は、決して多くはないのではないかとも感じました。

他の産業よりも大幅に高い平均年齢

ただ、バスの運転手の労働環境が良いとはいえないのは事実のようです。先だって、小学校教員の年齢構成が50歳代以上と20歳代に二極化しているということをご紹介しましたが、バスの運転手は高齢化が顕著です。日本バス協会のアンケートによると、平成17年度に30.8%だった20歳代・30歳代の運転手の割合は、平成22年度には24.5%にまで減少しているそうです。平均年齢も48.3歳で、全産業の平均(男子42.8歳)と比べると、明らかに高くなっています。

また、労働時間も、全産業の平均では月に180時間、電車の運転士は162時間であるのに比べ、バスの運転手は209時間とかなり長くなっています。また、利用客の減少による収入減を人件費の削減で補ってきた結果、年間給与も約440万円と全産業平均の520万円に比べ見劣りします。(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」平成25年)さらには、平成14年にはほぼ9割の運転手が正社員だったのに対し、平成24年には正社員の割合は7割を切っているのだそうです。

労働時間が長い、乗客の命を預かるという大変な仕事である割に給料がよくないなど、バスだからこその要因はもちろんあるでしょうが、少子高齢化に伴い今後様々な業種・職種で顕在化してくるであろう人手不足問題が、バス業界では一歩先んじているといえるのかもしれません。国土交通省でも“バスの運転者の確保及び育成に向けた検討会”を立ち上げ、若者へのアピールや、女性・高齢者の活用の方策を探っていますが、その成果は多くの他の業種にも有用なものとなるはずです。

高齢で自分では運転できない・しない人も今後ますます増えるでしょう。誰もがクルマを持つようになり利用者の減少に悩まされたバスですが、身近な移動手段として今後極めて重要な役割を持つようになってくるはずです。