教員の低年齢化-教員を取巻く仕事環境の問題-
少子高齢化の現代において、働き手の若年化が進んでいる業界があるのをご存じでしょうか。学校です。国公私立すべて小中高校の教員を対象に文部科学省が3年に一度実施している「学校教員統計調査」によると、教員の平均年齢は小学校で44歳、中学校は43.9歳、高校では45.3歳で、ともに前回調査から0.1~0.3歳低下したそうです。
働き盛りの「40代」が減少することの弊害とは
企業規模が10-99人規模の民営事業所の大学・大学院卒労働者の平均年齢は41.2歳(厚生労働省「賃金構造基本統計調査平成25年」による)と比べると、平均年齢が40歳代半ばというのは、他の産業と比べて決して若いわけではありません。しかしながら、これだけあらゆる場面で高齢化が言われている中で、わずかながらも“若返り”をしているということで注目されています。背景には、「1970年代前半の第2次ベビーブームへの対応で大量採用された教員の定年退職を迎え、若手の採用が増えていることが影響」しているとみられています(日本経済新聞 2014/8/4)。
もう少し詳しく実態を見るために、小学校教員の年齢構成推移を見てみました。
20歳代の割合も増えていますが、同時に50歳代以上のベテラン教員の割合もこの10年間で約3割から4割程度にまで高まっています。そして、その分減っているのが40歳代の中堅教員。平均年齢としては40歳代半ばでも、その実態はベテラン教員と経験の浅い若手教員から成り立っているということがわかります。
働き盛りで、若手の指導に当たるべき立場の40歳代の教員が減ってしまっていては、いくら若手が増えたとしてもその若手の成長を促すことが難しくなることが考えられます。実際、指導力不足の先生や、十分な経験がないままに30代で若手を指導する立場に立たざるをえない先生方の話もよく聞こえてきます。
圧倒的に長い日本の教員の労働時間
教員をめぐる問題としては勤務時間の長さも指摘されています。事務作業や保護者への対応などに時間を取られ、授業の準備などに十分な時間を使えていない、というのです。OECDが行った調査(国際教員指導環境調査、TALIS2013)では、日本の教員の1週間当たりの勤務時間は53.9時間で、調査参加国の平均38.3時間を大幅に上回っており、特に課外活動の指導(日本7.7時間、平均2.1時間)、一般的事務業務(日本5.5時間、平均2.9時間)は突出して長いという結果が出ています。
一方で、このOECDの調査では、日本の教員の研修意欲の高さも明らかになりました。教科の指導法や学級運営、進路指導などの職能開発が必要と考えている教員が参加国平均では10%内外に留まるのに対し、日本では4-50%にも達しているのです。ただ、実際には仕事のスケジュールと合わなかったり、雇用者からの支援の不足で様々な研修活動に参加できていない、とのこと。
子供の数が減っていく中では、教員の必要数も減ってくるでしょうし、働き手が不足してくる中で、教育現場だけが別格というわけもいきません。教育現場にも少子高齢化問題が様々な影響を及ぼしてくる中で、先のOECDの調査に見られるような教員の意欲の高さを、是非実際の指導に結び付けていって欲しいものだと思います。