科学技術予測調査-8割以上が実現は不透明-
新しい年を迎えると、今年はどのような一年になるのかと、様々な予測や見通しが語られますが、今回は2-30年先に実現が予測されている技術について見ていきましょう。
日本がリードする技術とは…再生医療
文部科学省の科学技術・学術政策研究所では、目指すべき社会の実現に必要となる科学技術の中長期的発展についての検討を行うための「科学技術予測調査」を、ほぼ5年ごとに行っています。昨年行われた調査では、ICT、健康医療、農林水産、環境資源、社会基盤など8つの分野の932の技術やサービスについて、大学や研究機関などの専門家にアンケートを実施。それぞれの技術・サービスの重要性、日本の競争力、開発時期や普及期などの評価をまとめた速報結果が、昨年12月に発表されました。
分野別にみると、相対的に重要度が高いのはICTと宇宙・海洋・地球・科学基盤。この中で、国際競争力が高く日本が世界をリードしていけると見込まれている技術には、「ハイ・パフォーマンス・コンピューティング」と「再生医療」があげられています。一方で、重要度が高いのに国際競争力が低く、重点的に取り組まなければならないとされているのが「サイバーセキュリティ」「ソフトウェア」と、健康医療分野の「新興・再興感染症」です。
今後10年以内という、早い時期に技術実現が期待されているものとしては、下記のような技術・サービスがあげられています。
- プライバシーを保ったデータ活用手法の開発とその理論的保証
- iPS細胞などの幹細胞を用いた再生医療において、腫瘍化した移植細胞を検出する技術
- 生鮮食料品を1週間程度、冷凍・冷蔵せずに保存する流通技術
- 人工衛星等により、降水や雲の発生等の大気状況を全地球規模で高精度に観測する技術
- 局所的ゲリラ豪雨等を100mメッシュで予測する技術
- がれきの中からの救助、建物内の救急搬送などで活躍できるロボット
- 農作業の自動ロボット化
このほかにも、2026年には「過半数の語学学校で人工知能が教師を務め」、2032年には「1年以内に発生するM7以上の巨大地震の時期、規模、場所、被害を予測」できるようになり、2038年には「宇宙で太陽光発電をして地上に電気を送る」ようになる、などと予測されています。
しかし、大半の技術は実現性に疑問符が…
これらの、将来実現可能となる技術やサービスを見ていると、昔読んだ漫画にあったような未来社会のイメージも浮かんできて、果たして本当にこれらの技術は実現するのだろうかと考えてしまいます。
もちろんこれまでにも「予測時期と実現した年に大きな差が出た技術もあり、的中率を巡る議論」は行われており、今回の調査でも
過去に選んだ技術の8割以上が実現は不透明として評価対象外となった。
(日本経済新聞 2014/12/16)
という厳しい現実があるのだそうです。ただ、個々の研究者や機関・企業レベルにとどまらず、「日本の強みの開発分野や日本が力を入れるべき研究テーマを絞り、技術開発に携わる官民の関係者が確認する」ことにこそ、この調査の意義があるのは確かでしょう。
個人的には、「若返る成分の投与や老化を招く物質を抑える工夫で健康寿命を延ば」せるようになることを期待しつつ、そのころ(2035年)にはもはや手遅れなので、もっと研究開発を急いでもらわなくては…などと思うのでした。