シニアのネット利用の実態-日本経済新聞社ネットライフ1万人調査より-
日本経済新聞社が実施した「第2回ネットライフ1万人調査」で、60代以上のシニアの活発なネット利用の実態が明らかになりました。最近1年間に生鮮や加工食品など「食料品」を購入した人の割合は半数を超え、ネット経由で使った金額の合計は23万1800円に上ったそうです。
シニアについての主なデータを見てみると、日常生活にネットが完全に入り込んでいる様子がうかがえます。
- 「食料品」のネットでの購入者比率は53%、全体を6ポイント上回る
- 調査した17分野のうち、「食料品」の他に「IT関連製品」「医薬品・サプリメント」「レンタルサービス」で、シニアの購入比率がトップ
- ネット経由の消費金額はシニアの平均23万1800円。全体平均を1万6200円上回る
- 平日のパソコン経由のネット利用は2時間41分で、全体平均より30分多い
(日本経済新聞 2013/10/23より)
ネットであれば自分の納得のいくまで品定めができるので、こだわりを持つシニアには適しているとか、重たいものやかさばるものを持ち歩かなくてよいのでシニアの間でもネットスーパーの利用が拡大している…等などの話は他でも耳にしますが、他の年代と比べて、購入率も、消費金額も、ネット利用時間も多い(パソコンに限ればですが)というのは、少し意外にも思えます。
そこで、シニアのネット利用に関する他の調査も見てみました。
- 現在ソーシャルメディアを利用している
50代=41.8%、60代=34.9%、70代=35.3%
- 現在利用しているソーシャルメディア
Facebook=26.0%、 Twitter=14.2%、 Line=11.3%
(ソニー生命保険株式会社 「シニアの生活意識調査」 50-79歳の男女1000名に対し2013年9月実施)
「利用している」程度は人それぞれと思われますが、4割程度の人がソーシャルメディアを利用しており、4人にひとりがFacebookを利用している、というのはかなりの利用率ではないでしょうか。
とここで思い浮かぶのが、先日のコラムでもご紹介したOECDの『国際成人力調査』。 “日本人の「ITを活用した問題解決能力」はOECD諸国平均並みで、特に60-65歳の層ではOECD平均を下回っている”というものです。上記の調査結果からうかがえる、ネットで自由自在に買い物をし、日常的にソーシャルメディアも使っているようなシニアの姿からは、OECD諸国と比べて「ITを活用した問題解決能力」が劣っているなどということは想像できません。
この乖離がまさに、『国際成人力調査』でも触れたデジタルデバイドではないでしょうか。上記の日本経済新聞社の調査も、ソニー生命保険の調査も、インターネットを利用した調査です。そもそもネットを利用していない、ネットにアクセスのない人はこれらの調査対象に入っていません。
ちなみに、総務省が毎年行っている『通信利用動向調査』は、インターネット利用者に限らず幅広い人々を対象にインターネット普及率(過去1年間にインターネットを利用したことがある人の割合)を調べています。そのシニア層の数字(平成24年)は、60-64歳=71.8%、65-69歳=62.7%、70-79歳=48.7%。決して低い数字ではありませんが、シニアのほとんどがネットを利用しているという状況でないことは明らかですし、日常的に利用している人となるとさらに数字は低くなることでしょう。さらにこの調査によると、60歳以上のSNS利用率は3.1%です。
ネットを使える人、便利に使っている人はどんどん活用し、ネット消費のけん引役とも目される一方で、ネットを使っていない・使えないというシニアも少なくはないことを忘れてはいけない。そんなことを考えさせられた調査結果でした。