国際成人力調査にみる日本人のITリテラシー②
トップレベルの「読解力」「数的思考力」と比べて、OECD諸国平均レベルの日本人の「ITを活用した問題解決能力」。
年代別のデータを見ると、シニアと若年層というふたつの年齢層に問題がありそうだということが見えてきます。
15-65歳の調査対象を5歳刻みで集計し、IT活用能力の平均点をOECDとの比較で見たのが上のグラフです。
日本の平均点がほぼ上回っていますが、唯一60-65歳の層でOECD平均を下回っています。
IT活用能力がトップでないのは、シニア層で思うように得点をあげられていない、という要因がひとつあるようです。
しかし、現在60歳の方が会社に入った当時、コンピュータは“電算機室”にあるものではなかったでしょうか。
日本の家庭にパソコンが普及したのは、実はこの20年程度の話に過ぎません。
(家庭におけるパソコン普及率: 1993年=約12%、50%を超えたのは2001年。内閣府 消費動向調査より)
生活に、仕事にITというこれまでほとんどなかった要素が入り込んできたものを、
逆によく使いこなせるまでになったと評価してほしいと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
シニア層のIT活用力が見劣りするというのは、世代的要素と考えられるのですが、着目したいのは16-19歳、20-24歳の層です。
OECD平均を上回っているとはいえ、その差はごくわずかです。
生まれたころから、もしくは物心ついたころにはパソコンはもちろん携帯電話もある程度普及していたという世代のIT活用能力が必ずしも高いとはいえない、というのは少し驚きです。
これに関し、前回ご紹介したようにパソコンを使っての調査だったことを鑑みて
「携帯電話やスマートフォンの使用が中心で、パソコンに触れる機会が少ないのだろうか」(読売新聞 社説 2010/10/10)
とする見方があります。そう考えると「教育のIT化の促進」だったり、「ITに親しむ環境づくり」をさらに進めることが必要になります。
しかしながら、問題はそういったツール、機器、環境にあるのでしょうか?
ITを“活用”はできても、それを用いた“問題解決能力”の習熟度が問われているのではないか、という気がしてなりません。
年代別の調査結果を見ると、参加国全般で「学校教育終了後も向上し、
30歳前後でピークを迎えた後、徐々に低下していく傾向」があります(文部科学省 OECD国際成人力調査 調査結果の概要)。
日本も同様ですが、年齢が高くなっても高い水準を維持しているということも特徴のひとつにあげられます。
特に、数的思考力では、25-29歳が298.8点でピークですが、50-54歳の290.9点は20-24歳の289.3点を上回っています。
さらに、60-65歳でも267.8点と高水準を維持しています。
これについては、
「30代半ばくらいの一定段階までは階層別の社員教育が丁寧に実施されていることも要因」(日本能率協会 大谷美一常務理事)と、
日本の企業が人材育成を重視してきた経営風土があるとする見方や、
仕事に就いている人のみが対象ではありませんので、
「主婦やリタイア世代も趣味やお稽古が盛んで、職業に就いていなくても、
日本では多くの人が社会と接点を持ち、基礎学力を維持する機会がある」(香川大学生涯学習教育研究センターの清国祐二センター長)など、の見方がされています。(産経ニュース 2013/10/09 より)
日本人の底力である高い教育水準と社会に出てからの成長機会。これからも、維持向上に努めていきたいものです。