-第5回-いろいろな「うつ病」と発達障害
先に「新型うつ病」と言われている、ひ弱な環境から育った若者に多くみられる「うつ症状」について、困り果てている人事担当者や、指導のできない先輩の問題を述べてみた。
この新たな集団は、これまでの会社の中で先輩の背中を見つめ、企業の風土を感じ取りながら、社内のOJTと適切なOffJTの組み合わせで成長してきたこれまでの集団との間に、違う文化を持ち込んでしまったのである。
このような企業文化の混乱が原因になってこれまで企業に蓄積されてきた良き慣習や、暗黙知としてのノウハウが伝承されず、想定外の事故が発生したり、中途退職者の増加現象などになっていることもあるのかもしれない。
病状全体としては軽症といえるが、本人の眠れない・食べられない、疲れやすいことは耐え難いもので、自殺念慮も発生するので、周囲の者としては充分の配慮が必要である。
したがって休養を与えながら、行動できない点について、計画的、段階的に訓練するようなプログラムを与えることが早道ではないか、と考えられている。
しかし、このように「新型うつ病」をとらえ、成育過程に不十分な行動の「しつけ」を行わなかったから、という一種の「発達障害」の見方をするならば、発達障害について、少し勉強しておこう。
発達障害とは、何らかの要因によって、中枢神経系に障害を受けている人を言う。生まれつき、障害を受けた機能が働かないことによって、その部分の能力が働かない。
たとえば、精神の発達が遅滞する、学習する能力が欠けている、注意欠陥があったり、自分の行動がコントロールできないため、多動性(じっとしておれない)等が生じる。
そこで、周囲の仕事の同僚・上司、が留意しなければならないことは、出来ないことを無理にしつけようと勧めたり、指導するのではなく、出来る機能、興味・関心を持つ部分に焦点を当て、その部分でできることの中から伸ばすものを見つけ、少しづつ仕事などに結びつける指導を継続しなければならない。
このように考えてくると、「うつ症状」「うつ病」というものの内容は、非常に広いものであることがお分かりになられたと思う。
それでは、どうすればよいのかについて、先に書いた「ストレスモデル」が参考になる、それぞれに予防し、衝撃を緩和するのである。
・個人要因:ストレス耐性を強くする訓練、基礎的情報教育、業務に目的を持つこと。
・仕事以外の要因:家族関係、経済状況に心配を残さない、健康の保持、広い余暇活用。
・緩衝要因:仕事の同僚、上司の気配り、協力。相談相手、メンター、情報を得る。
・ストレッサー:仕事の与え方、時間管理、余業管理、環境管理、ルール作り。
さらに企業全体が、仕事環境を良くすることに全力を挙げているか、楽しく仕事が出来る条件に配慮しているか、目標を明示し助け合うこと、社会に貢献する結果を出せること。
これらはトップが方針を明示すれば、自然に結果が付いてくるはずのものである。
人をうまく使っているだろうか、特に、専門家を大切にすること。一人ひとりに声掛けをすること。気持ちよく健康な職場にしよう。参考:尾久裕紀先生講義より。