-第2回-うつ病とは、どうして、おこるのだろう
私は、産業カウンセラーという資格を取って20年になり、シニア産業カウンセラーやキャリア・コンサルタントの称号も、いただいています。このコラムを書いているのは、医師や心理士のように病気の診断・治療をする立場ではなく、産業カウンセリングの知識が、このストレス社会のもたらす健康への攻撃予防のために、今や、社会人に必要な常識となっていることをお知らせしているのです。
私も長年の企業勤めの間に、精神の病気に関わる問題を、両手両足の指で数えられぬほど経験しました。しかし、当時はこのような経験は、本人も会社もなるべく人に隠すことだったのです。今は全ての管理者が持つべき必須の知識となってきています。
まず始めに、うつ病が発症するメカニズムについて、事例的なお話をします。
私が3つ目の課長職として隣の課に転任してしばらくたったころ、課の次席にいた男が私の机のそばに来て、「課長、S君が、今日は出勤できないということで、休んでいるのですが・・」と言ってきた。S君は今年新卒で配属されたばかり、梅雨の始まりごろのことであった。話を聴くと、独身寮で朝、とても頭が痛いと言って起きて来れない、という。
勤務時間が過ぎてすぐ私は郊外の寮まで行き、部屋に入ると「課長すみません、朝、起きようとしたところ、猛烈に頭が痛く起き上がれなかったのです、、今は、なんとか」という。それから、2段ベッドの下に座り込んで、会社生活の話をいろいろして、最初は慣れないので誰でもそんな症状になるもので、すぐに治るよ」と30分ほど話して帰った。翌日、本人は何の問題もなく出社し、仕事についているので、「よかったな」と声をかけ、次席にも気を付けてやれ、ということをみんなに伝えるよう指示をした。
一回のコンタクトでその後問題なく勤めていたが、数年たって、別の上司になった時に
再発し、今度はしばらく休んだ後に復職していたが、10年以上たって、別の仕事環境で再発をした。その時は会社の経営状態が悪く、退職勧奨をされそうだという話を聞いた。例の次席がその時は上司になっていて、私も相談を受け、家庭環境を調べ、本人にも話をして、親類の仕事を手伝うという道を見つけ退職していった。その後は毎年年賀状を送り貰う関係がいまだに続いている。しかし結婚はしていないようだし、どんな生活をしているのだろうと、いまだに心配な気持ちにもなる。
これが、会社で起こる「うつ病」の一例である。問題になるところを書き並べると、
1、本人の気質にかかわるところがあって、いちど発病すると長く休職と復職を繰り返すことになり、本人にも企業にも負担がかかる。違う次元での対応策が必要である。
2、最初の発病には、上司や仕事環境の組み合わせの不適切さ、配慮の不十分から起こることが多い。関係者、特に部下を持つ上司へのメンタルへルス教育が重要。
3、うつ病に対して投薬の効果が発見されたことにより、精神病医が薬で対応することが多くなった。薬には副作用があり、このため却って病気が長引くことにもなっている。
4、いわゆる「新型うつ病」という、これまでの「従来型」と全く違う自分勝手な症状を持つ若者の出現が、会社の人事関係、管理監督者の手に負えなくなっている。
職業ストレスモデルとアダムズの画で分かるように、個人要因のストレス耐性を強める工夫が必要で、自律訓練や、幼児時代のしつけにさかのぼっての行動トレーニングが有効。
次には緩衝要因として、関係する同僚のサポートや配慮、上司の人間性を高める指導などが必要でしょう。
さらに言えるのは、仕事のストレッサーを前向きに受け止める姿勢、自分の仕事に対し厳しく対面し、自分が仕事をする理由は何なのかを真剣に考え、チームワーク、人と人とのコミュニケーションの取り方について学ぶことが大切でしょう。