-第13回-棺を蓋(おお)いて事 定まる

tsutsumikanban
年末になるとまず送られてくるのが、今年亡くなった人を知らせ、年賀の欠礼を詫びる黒字一色の葉書である。これまではほとんど父母、兄姉であったのが、少しづつ同じ世代に移ってきて、今年は4人の同期入社、同学・同級生の遺族からのお知らせをいただいている。それぞれ、何十年同じ世代を生きてきた人たちだけに、同じ背景の中にいたのにかかわらず、いろんな仕事や家庭の役割が異なり、違う人生のシナリオになっていく様子が思い出されて、感慨深いものがある。
特に、大学同期で同じ会社に入ったA君については、大の仲良しだっただけに、何とも淋しい気持ちがする。
早速奥様に昔話を書いて、お悔やみの手紙を送ったが、奥様からも、同じ気持ちであったらしく、心のこもったお返事を美しい文字、文章で書いていただき、それを眺めていると、人生の出会いの複雑さをしみじみとかみしめる気がする。

 「棺を蓋(おお)いて事 定まる」と、よく言われる言葉がある。
人の値打ちは、その人の棺(ひつぎ)に蓋(ふた)をするまで、分かるものではない、
ということであるが、より正確に言うと「事(こと)定まる」と言う言葉の裏にあるのは、亡くなったことでその人の活動は終わった、これ以上にいいことも悪いことも加えることが出来ない、ということになるだろう。
その意味では、これまでのその人の活動として残したことが、事物、として確定したことになるわけだが、世の中の変化、考え方や科学技術の進歩の方が後から追いついてきて、亡くなった人の仕事を再評価されることはよくあることなので、値打ちが評価として定まったことではないかもしれない。

 したがって、まだまだこれから多くの選択肢に直面されるプレシニアの皆さんに伝えることとしては、人生は数多くの機会に遭遇し、そこでどのような道を選んだか、どのような人に出会ったかの繰り返しであること。すべてを予定調和で収めることはできないので、必ず、自分の責任で決めなければならないものであること、である。
 そうなってくると、自分の方でそれだけの「機会」に対応するだけの「知恵やスキル」を身につけておくことが第1であり、その次には、「人」との出会いをどのように生かすことが出来るか、という活動力が大切になってくる。

 私が人材紹介や再就職支援の世界に入って、キャプランとその社長Yさんに出会ったことは、それからキャリア・カウンセリングや人間の発達課題は何なのかという領域に入り、現在までに繋がる有難い偶然であるが、誰かが紹介してくださったり推薦してくれることを私が受け入れ、自分で行動したことがことの始まりである。それまでに産業カウンセリングや中小企業診断士の勉強をしていたことが、役に立ったかもしれないが、このような方向に関する情報と指導に従って行動したことが成果に結びついている。
 そこで、キャプラン時代に開催した「キャリア・プラン・セミナー」に来ていただいた中小企業投資育成会社のB専務さんの言葉を紹介しておしまいにしよう。
 人生は「運・鈍・根」に尽きる。後ろから言うと「根性」。やる気を失わず、最善の努力を積み重ねること。これが人の信用を得る。次に「鈍な人」。賢いよりバカがいい。目先が利き小器用な人より、鈍感で誠実な方が好まれる。人に好かれなければ、成功しない。
そして最後は「運命」である。これまでの2つがクリアしたとしても、ツキに見放された人は残念だが成功しない。運命は作ることはできないが、やはり、前向きに進んで行く人でないといい「運命」に出会うことはないだろう。
 この方も先年亡くなられたが、中小企業の特質をよく知っておられ、いつも楽しい講義をしてくださった。大成功の人生を全うされたが、いい運の星も持っておられたのだろう。