-第8回-人が持っている行動のパターン
「蓼食う虫も好き好き」という言葉を、私など、すぐに思い出してしまうのだが、人は刺身のつまなどに、その辛味を利用して食べる程度なのに、あの辛い蓼を主食としている虫もいるものだ、という言葉には、なかなかの含蓄があるのではないだろうか。
人は虫よりも、はるかに複雑に出来ているので、好き・嫌い、興味・関心については、
まことに多様なものがあるのだが、これから仕事を探している人たちにとっては、とても重要な勉強の要件であると思う。まず、自分自身の「行動の特徴」をよく知ることから、求職は始まるからである。なぜ、「行動の特徴」というかと言えば、人の内面は表から見えていないし、知らない人と会う時に、まず、見えるのはその人の行動の特徴であり、その表れ方をよく分析し評価できれば、その人の内面の本質をも掴めるものだからである。
私は、会社で営業次長をしている時、突然人事部の課長に呼ばれて、ある研修を受けてくれないか、と言われた。その課長の言う所では、現在わが社の状況を見ると、いろんな内外の事情で会社の活性が十分でないことが心配である。そこで、上級管理者を対象に、会社を活性化させる面白い研修があるというので、導入を考えているが、堤さんにテストパイロットとして受講し、効果について評価してきてほしいということであった。
それは面白そうではないか、ということで、もう一人選抜された男と一緒にその研修に参加して、まるまる1週間山中のホテルに缶詰めになって大変な厳しい経験をしたのだが、その話は別としてそこで人を観察する面白い「テストツール」を発見・体験したのである。
それが、まさに人の「行動パターン」を見分けるもので、その後、K大学の心理研究者に検討をお願いして、この考え方を活用したテストを作成していただいた。私は、その後、人材企業に入職した際、再就職支援セミナーにこのテストを使用し、本人に自分の行動を判断するツールとし多くの気づきを得てもらうことが出来た。きっと役に立つと思うので、このテストの考え方を紹介してみよう。
- 人の行動には、人を対象とする行動と、人以外の物を対象とする行動がある。
- 人の行動の仕方には、接近型、是非取りたい、と回避型、近づかないように、がある。
- 人が行動する状況は、平常時、とストレス状況下、がある。
これを組み合わせると、平常時とストレス状況下のそれぞれで、4つの行動型が現れる。
【融和指向型】—-サービス優位で、社交性があるが、やや不注意で、一貫性に欠ける。
【競争指向型】—競争優位で、行動的だが、やや人に対する配慮に欠け強引さが出る。
【事実指向型】—-堅実優位で、言動に一貫性があるが、真面目、粘り強さが、回りくどい。
【理念指向型】—-理念優位で、行動より思考が優先する。協調的だがやや引っ込み思案。
設問に順位づけ回答することにより、平常時とストレス状況下の計量結果を判定する。
コメントを書かれた先生の素晴らしい言語化能力もあって、結果を貰って、「私の行動をずっと後ろから見ていて書かれているようだ」というコメントをくれた女性もおられたし
「自分では気が付いていたがずっと人には隠していたつもりの行動が指摘された」という驚きを告白された中年の男性の表情も心に残っている。
さらに、ストレス状況下になるとどこが変わるかのメカニズム読み取ることによって、ストレス耐性の特徴を指摘・予想されるのでは、ということに気づかれた方もおられた。
この結果、自己理解が進むとともに他者に対する理解が出来たことで、お互いの行動に寛容な態度、より踏み込んだ交流が出来たことで会社の空気が改善され、
企業業績にも貢献したことは間違いない。
現在はMSCテスト会社に委譲しているが、一人一人の人間性を「行動のパターン」から見出すツールとして、更に活用されることを期待している。