高齢者雇用延長と若者の雇用はバッティングするか?

rockin

高齢者を継続雇用し抱え込むこと(ロックイン)が若手の雇用にどういう影響を与えるか。

若手の新規採用を抑制したり非正規の若手社員を締め出したりすること(クラウディングアウト)に繋がらないか?

H24年版労働経済白書は、「高齢者を雇用することと若手を雇用することは補完的で、高齢者を雇用する企業は若手も採用する傾向にある」との説を紹介している。
確かに高齢者が担う仕事と若手が担う仕事は同種・同質ではなかろうし、新卒社員の採用は当面の労働力確保とは異なる次元の問題でもある。

そうは言っても、厳しい競争に晒されている企業としては、高齢者の継続雇用をする場合、
その分若手の採用・雇用を抑制してでもスリムな企業体質を維持したいと思うのが自然かも知れない。
政府刊行物としては高齢者の継続雇用が若手の雇用に悪影響を齎すとはなかなか言えない事情も感じられる。

要は、その時の企業に少し余裕があるか、或いはギリギリの目下の競争を戦っているかによって結果が変わって来るということだろう。
マクロ的な事例を挙げると、イギリスは現在の65歳定年制を廃止し企業に社員を68歳まで継続雇用させ、
年金給付開始年齢を68歳に繰り延べることを構想している。
イギリスの現在の社会経済状況から判断すれば、この場合の3年間の雇用延長措置は若手の雇用に悪影響を与えないことは無かろうと筆者は推測する。
イギリス政府もそう思ってか、3年間の延長を今後数十年掛けてじりじりと進めて行く考えのようだ。

特定の企業の場合は個別議論となり何とも言えない。
筆者が長らく勤務したM重工では経験を積んだエンジニア、建設技術者、高度熟練技能者などが重要な職種であったので、
ベテラン高齢者の働き場所は十分あったし、また将来の基幹要員の中長期の育成が必要欠くべからざる業種であったから、
会社が苦しい時も新卒採用だけは抑制しないようにした。その辺は業種によっても事情が異なるだろう。

清家 篤(労働経済学者、慶応義塾理事長兼大学長、内閣府有識者会議座長兼委員長)は「高齢者は含み資産足りうる」と言っているが、
本当にそうかどうかは高齢者銘々が自らの胸に手を当てて問い掛ける問題である。

社会経済的にどうか?

個々の企業の立場でどうか?

当事者としてどうか?

それぞれのレベルで問われることである。