定年退職後、自宅の居心地は良くない
高齢者をめぐる法整備の結果、雇用については、本人が希望すれば、特別問題のない限り65歳まで雇用が保証されることとなった。一方、年金も給付開始年齢を順次65歳まで繰下げており、この両面施策でマクロ経済的には少しは息が付ける状態に漕ぎ着けはした。
しかし、今後の人口構成の急速な高齢化を織り込んで予想すると、年金原資は遠からぬうちに逼迫し、65歳未満の就労人口層にのし掛かる負担の重圧は労働意欲やモラールを損ねかねない。
これを緩和する解としては
1.技術革新と飛躍的な生産性の向上(就労者一人当たり生産性の著しい向上)
2.就労人口の増加(外国人労働者の大量受入)
3. 65歳以上高齢者の就労促進
の3つであろう。必要十分な効果を上げるためには幾つかの施策を組み合わせる必要もあろう。
さて、3.の65歳以上高齢者の就労促進については、社会経済的見地のみならず、高齢者の生き甲斐や生活の質の視点で見ることが大切である。
私は今年64歳になった。会社生活に終止符を打ち、待望の?悠々自適の生活に入り、退職直後から中南米を自由気儘に旅してフリーになった人生を満喫した。それはそれでひと時楽しい思いもしたのだが、日本に戻ってみるとなぜか居心地が悪い。社会に必要とされず、社会的役割も無くなってしまったことに対するそこはかとない淋しさを感ずるのである。
相当数の高齢者がこのように感じているなら、社会は高齢者の積極的活用を進めるべきである。それは高齢化社会日本が追求すべき方向であり、同時に活き活きした高齢者を擁する精神的にも豊かな社会(spiritually rich society)を生み出すからである。
目下の法整備の線引きである65歳を、社会が高齢者雇用の限界年齢のように扱う風潮があるが、いずれの意味においても正しい考え方では無い。やる気も経験もある高齢者を活用できる社会のソフトシステムを構築することが必要と感ずるものである。