-第7回-「(番外編)年金制度について考えてみた」年金制度概要2
はじめに 前回の番外編の振り返り
本コラムをご覧の皆様、こんにちは。少々、ご無沙汰となってしまいました。さて、今回は番外編として「年金制度について考えてみた」と題する第2回目となります。
第2回目のテーマに入る前に番外編第1回目の内容を要約しますと、次のようになります。
1.高齢労働者の活用が期待されることと年金制度の趣旨は本来ベクトルが逆。
誤解を恐れずストレートに表現させてもらえば、
高年齢者雇用安定法 高年齢者雇用安定助成金etc. |
高年齢者に引き続き労働の担い手となってもらって日本を支えてもらうための仕組み |
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公的年金制度 | 高年齢者に隠居してもらったその後の生活を日本が支える仕組み |
ということで、実は2つは全く真逆のベクトルであるという要素があるという考え方をとりました。
2.年金制度自体に制度設計当初とは次元の異なる事態が生じている。
すなわち、旧法制定時の年金制度は、
- 高年齢者を支える期間が短期間
- 高年齢者を低負担で支えることができた十分な数の若年(労働力)層
といった背景事情があったことに対して、昨今の年金財政においては、
- 高年齢者を支える期間の長期化
- 高年齢者を高負担でようやく支えることができる限られた数の若年(労働力)層
といった制定時とは全く真逆の現象が生じてきているという周知の事実について触れました。
そして、以上の観点から、今後の年金財政を考えるとき、その一つの処方箋として、従来の「労働力」概念の転換が図られている。その一つが、例えば画一的に年齢で区切った労働力・非労働力の考え方からの修正であり、高年齢者の労働力化の推進が必要ではないか、ということでした。
変革を迫られる年金制度の支柱的コンセプト
では、年金制度の支柱的な概念とは何なのか?そして、高年齢者の労働力化の推進が必要というのはその通りかもしれないが、そうであれば、それをどのように具体化していくのかが問われているところです。
この点、年金制度の支柱的概念は「世代間扶養」にあると考えます。ストレートに言わせてもらいますと、人間は誰しも老いる、老いると若いころと同じような稼得能力を維持することはできないし、身体機能にも衰えが生じてくるのはやむを得ない、その人間であれば誰にでも生じる「老後」という言わば一つのリスクをヘッジする仕組みが年金制度であり、その「老後」リスクを若年層が支える仕組みを軸として設計されたのが今の年金制度(世代間扶養)である、と整理します。
しかしながら、この世代間扶養は少しばかり考え方を進めなくてはなりません。それは「扶養の必要度合いに応じた世代間扶養」です。この「扶養の必要度合い」は年齢だけでは線引きできません。稼得能力によっても相違が出ますし、その稼得能力にすら就労に基づくものと不就労に基づくものとがあります。身体機能によっても異なることがあるでしょう。
そして、その「扶養の必要度合い」について、私は一般的な考え方とは少し異なる考え方を持つべきではないかな、というスタンスを持っています。
すなわち、「扶養の必要度合いの一般的な考え方」とは、
稼得能力の高い人には年金によって手当する必要性に乏しい。だから年金額を減額して差し支えない。
という考え方であるのに対して、私は、
稼得能力が高いということはそれだけ社会への貢献をしているといえるから年金額を減額してしまうとその貢献度に対して矛盾が生じる。だから年金額はそれだけを理由に減額してはならない。 むしろ年金額だけでは生活が立ち行かない高齢者の就労の機会を増やす施策がとられるべき(稼得能力の高い高齢者の就労の機会も増える施策です。稼得能力の高い高齢者を除外するのではありません)で、それには例えば、
- 高齢労働者については現在の最低賃金制度とは異なる別枠の最低賃金ラインを引く。(必ずしも最低賃金額を低く設定する方針ばかりではなく、一般のラインよりも高額にするという考え方もありだと思っています。但し、後者の場合には、次の2もセットで実施されることが要件だと思います。)
- 高齢労働者用の「標準報酬月額等級表」を設計し、最低賃金は高くても、社会保険料は若年層よりも安価に設計して、幾分、企業にとっての採用意欲を高める方向に導く。
そして、ここで支払われる保険料は世代間扶養の財源ではなく、いわば「同世代間扶養」として用いられます。
※なお、雇用保険料は現在も高齢者については免除されています。
年金制度は崩壊しない
事業主さんや働く社員の方々と、仕事柄接する機会が多いのですが、年金についてはみなさんほぼ同じような印象を持っています。それは「保険料が高い」「どうせ自分たちはもらえない」という意見です。「保険料が高い」という点については、コメントに困るところですが、少なくとも「もらえない」ということはないと私は考えています。むしろ確定給付型で、物価等の変動にもスライドで応えてくれて、「老齢」だけではなく「障害」「死亡」といった局面においても自分や遺族を守ってくれる等、保険としての機能は他の金融商品よりも優れている面が多くあると思います。
では、なぜ「もらえない」と感じるのか?一つには「今、納付している保険料に見合った年金額が受給できなくなるのではないか」と思われているからではないかと考えます。ですが、年金制度は崩壊したりなんかしません。「今、納付している保険料に見合った年金額の受給」というのもまずもって心配はないと考えています。
次回の番外編では、年金財政について考えていきたいと思います。
引き続き、読者のみなさん、どうか宜しくお願い致します!また、拙文に関して忌憚のないご意見なども賜れましたらありがたく思います。
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