残薬
皆さんは、医者から処方された薬をちゃんと決められた通り飲んでいますか?
最近、飲み残したり、飲み忘れたりして患者の手元に蓄積されている「残薬」が注目されています。4月の厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で、患者の重複受診、重複投薬の実態が改めて指摘されたことをきっかけに、テレビや新聞などでも、様々な実態がとりあげられるようになりました。押入れを開けると薬の袋でいっぱい…などという映像を見て驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この中医協の資料を見ると、複数の医療機関に同一の医薬品を処方される重複投薬が行われたのは、統計的に見ると、10歳以上の患者の0.5%に満たないそうです。ただ、薬局に対する調査では、残薬を持つ患者がいるという薬局は9割を超えています(「頻繁にいる」17.1%、「ときどきいる」73.2%)。また、患者に対する調査でも、医薬品が「大量に余ったことがある」人も5%近く(4.7%)おり、余ったことがある人は半数を超えていたそうです(50.9%)。
残薬を金額換算すると、2007年に日本薬剤師会が実施した調査を元に推計した75歳以上の患者の残薬が年間約475億円。他の年代を加えると500億を超えると言われています。
この、残薬によるムダを排除すべく、調剤薬局において薬の飲み残しについて確認をすることが義務化されました。患者のお薬手帳などを見て、過去に処方された薬の残りを把握しないと、診療報酬が減額されることとなったのです。薬局で残薬の確認などをすれば削減できた医療費は約29億円という調査結果もあり(2013年度全国薬局疑義照会調査)、この診療報酬の改定による薬局における残薬確認の義務化によって、少なくともその分は医療費の削減が期待できる、ということになります。
ただ、薬局でチェックをしさえすれば残薬を減らせるという訳でもなさそうです。
医師の3.5人に1人が参加する医師専用コミュニティサイト「MedPeer(メドピア)」が行った残薬についてのアンケートを見ると、「薬を出さない医者は患者うけが悪い」と感じるという医者は6割近くにのぼり、「病院に薬をもらいに来ている人が多い」、「薬がないと何もしてくれなかったと感じるよう」、「その薬は必要ないと話すと機嫌が悪くなる」などと、患者側の姿勢を指摘する声があがっています。確かに、医者に行って「薬を飲まなくても大丈夫」と言われても、なんとなく不安に思ってしまう患者さんがいるということもわからなくはありません。
一方で、医師自身の説明不足や過剰処方などの問題も指摘されています。私自身も、ちょっとした風邪で医者に行ったときに、「この薬は要らないだろう…」「なんでこの薬まで出てるんだ?」と思った経験がなくはありません。
残薬を減らすには、薬局によるケアだけではなく、患者自身の意識改革、さらには、医師による指導など、それぞれでの取り組みや連携が必要となってきそうです。
39兆円の国民医療費のうち、薬局調剤医療費は6兆7千億円を越えています(平成24年度)。仮に500億円の残薬がすべてなくなったとしても、薬局調剤医療費の1%にも満たないのではありますが… 千里の道も一歩から、ですね。