定年後再雇用 同じ仕事で賃金減は違法 契約社員が勝訴

仕事内容は同じなのに定年後の再雇用で賃金を減らされたのは違法だとして、契約社員のトラック運転手3人が勤務先の運送会社「長沢運輸」(横浜市西区)正社員と同じ賃金の支払いなどを求めた訴訟の判決で、東京地裁は13日、請求通り、正社員の賃金規定の適用と差額分計415万円の支払いを命じた。佐々木宗啓(むねひら)裁判長は、「正社員と賃金格差を設ける特段の事情は見当たらず、労働契約法に違反する」と指摘した。
2013年施行の改正労働契約法は、有期雇用と無期雇用の間で賃金や労働条件に不合理な格差を設けることを禁じている。原告側の弁護団によると、定年後の再雇用賃金引き下げを同法違反と認めた判決は初めて。

判決によると、3人は14年3〜9月に60歳の定年を迎え、1年契約の嘱託職員として再雇用された。仕事は定年前と同じだったが、賃金は約25%減った。
会社側は賃金カットについて、65歳までの雇用延長を企業に義務付けた高齢者雇用安定法に基づく再雇用で、労働契約法は適用されないなどと主張した。
だが、判決は再雇用後も同法が適用されると認定。「職務が同一であるにもかかわらず、有期、無期雇用の間に賃金格差を設けることは、特段の事情がない限り不合理だ」と指摘した。再雇用後も同じ仕事をさせながら賃金を下げている他の会社や業界も、対応を迫られる可能性がある。

訴訟を支援した全日本建設運輸連帯労組の小谷野毅書記長によると、運送業界は慢性的な人手不足で、車ごとに仕事が割り振られるため、再雇用後に業務量が減ることはほとんどない。「世間では60歳を過ぎると給与が下がるのは当たり前と言われるが同じ仕事で差が付くのはおかしい。明快な判決だ」と評価した。
(毎日新聞 5月13日)

正社員が定年後に契約社員として再雇用された場合、正社員のときに比べて賃金を減額している会社は珍しくない。再雇用後は、業務内容や職務権限を変える会社も多いが、トラックの運転手のように職務が同一の場合もある。後者の場合、今後、同一賃金を維持する必要に迫られるだろう。かつては、「正社員より契約社員の方が賃金は低いから」というのが賃金引下げの理由であったりもしたが、労働契約法の改正でそれは通らなくなった。

労組がいうように、そもそも「60歳を過ぎると給与が下がるのは当たり前」とする考え方はおかしい。この判決は、この世間の思い込みを改めるよい機会となる。