吉野家、店舗設計見直し 女性やシニアが働きやすく
吉野家ホールディングスは今春から主力の牛丼店「吉野家」の店舗設計を見直す。客席の配置や厨房の設備を変え、店員の負担を軽くする。これまでは若い男性が働くことを前提としていたが、女性やシニア層の店員が働きやすい店にする。外食業界は人手不足が強まっている。大手チェーンで働き手の変化にあわせて店づくりを変える動きが出てきた。
2017年2月期中に新しい設計の実験店を数店出す。実際に作業効率がどう改善するか効果を検証したうえで、順次導入する店を広げていく計画だ。3月に最初の実験店として恵比寿駅前店(東京・渋谷)を改装開業した。
同店では厨房と客席を店員が移動する距離が長くなるU字型のカウンターを廃止。来店客がレジで注文して商品をその場で受け取るセルフ方式を採用した。店員が何度も客席まで往復する負担を減らした。
毎日大量のコメを炊く炊飯器も見直す。従来は1度に4キログラム炊ける大型だったが、実験店では女性や高齢層でも運びやすい2キログラムの小型タイプに刷新した。夏までに実験店を増やして顧客の反応も見極める。飲食店の現場の担い手は変わりつつある。従来は若い男性アルバイトが主体だったが、少子高齢化の影響で採用が難しくなっている。吉野家で働くアルバイトも女性比率は52.6%になる。60歳以上も3.3%と5年前から1.5ポイント上昇した。
(日本経済新聞 4月9日)
人手不足に悩まされている外食業界は、女性やシニアの採用を増やすため、勤務形態を柔軟にするなど主に働き方で工夫を凝らしてきた。吉野家は、さらに一歩踏み込んで、店舗の設計を変えようとしている。
従来、低価格が売り物の外食チェーンの店づくりは、効率を最優先して設計し、その効率を最大限引き出せる人材を確保しようとしてきた。しかし、人材確保が店舗運営のネックとなると、労働力の確保を優先し、確保できた人材の効率を最大限引き出せる店舗設計を目指さすようになる。
そして、これは、女性やシニアだけでなく、若い男性アルバイトにも歓迎され、人材確保はさらにしやすくなるだろう。人材獲得競争を繰り広げている他の外食チェーンも何らかの対応を迫られる。外食業界全体に働きやすい店づくりが波及し、女性やシニアの活躍の場が拡大することに期待したい。