介護保険制度見直し-利用者負担は増えるも、いまだ右往左往する高齢化への対策-
利用者の自己負担は2割に
介護保険制度見直しのための関連法案が閣議決定されました。
この法案が注目されている最大のポイントは、一定以上の所得がある人の自己負担割合を2割に引き上げることでしょう。
2000年度に導入された介護保険制度は、当初から3年間をひと区切りとして運営するとされており、実際これまでにもサービスの質の向上や医療と介護の連携などの実現に向けた見直しが行われてきています。しかし、これまで利用者の負担増に踏み込んだことはありませんでした。
厚生労働省の資料によると、2000年4月の制度開始時から2012年4月末までに、65歳以上の介護保険の被保険者数は38%増、要介護(要支援)認定者は144%増、サービス受給者は199%の増加となったそうです。
このままでいくと、介護保険の給付費用は2012年の9.1兆円に対し、2025年には約20兆円になり、それを補うためには保険料の負担を月額8200円にする必要があるという試算もなされています。
保険料の負担をなるべく抑えるためには、保険料以外の財源を確保するか、介護サービスの給付を抑制するかというふたつの選択肢しかありません。
財源ということでは、4月からの消費税増税によって得られる税収は、社会保障の充実に向けることになっています。
しかし、これで賄えるのは、低所得者の保険料の軽減措置などであり、全体の保険料を下げるまでにはさらなる財源が必要とのこと。
そこで利用者負担の引き上げという案が出てきたのです。
負担増は50万人程度
医療保険では、現役並みの所得のある高齢者は既に現役世代と同じ3割負担となっていますし、社会保障制度改革自体が負担能力に応じて負担する仕組みに変えようという方向を向いているのですが、負担が増えることに対しては当然反発の声もあがります。
議論を経て結局2割負担の対象は、年金収入が280万円以上の場合で、しかも月額の上限があるので「負担が直接増えるのは、いま制度を利用している人全体の10%、50万人程度になる見込み」(日本経済新聞2014/2/12)だそうです。
負担能力という点では、収入だけではなく資産にも着目すべきだという声もあがりましたが、こちらのほうは、低所得の要介護者が介護施設に入る際の負担を軽減するという措置(補足給付)について、預貯金や不動産などの資産を保有する人への適用を見直す、ということになりました。
一律に線を引けばよいという簡単な問題でないことはわかりますが、配慮に配慮を重ねた玉虫色の見直し策になっているという感じがしないではありません。
目標は地域強化と医療との連携
この法案は正式には「地域における医療・介護の総合的な確保を推進するための関係法案」といって、訪問介護や通所介護を全国一律で行っている体制を見直し市町村事業とすることや、医療との連携を進める体制の構築などが盛り込まれています。
新しい制度を作り上げていくのにトライアンドエラーが必要だということはわかりますが、未だに右往左往しているという感も否めません。
高齢化の進展は介護保険導入時から既に分かっていたはずのこととは思いつつ、国には手遅れにならないうちに改革を進め、安心して老後を迎えられる制度を確立してもらわなくては、と思うばかりです。